ランボルギーニ・ミウラP400にデビューから半世紀後に試乗 「本質は、やはり野獣」

公開 : 2017.03.31 16:00  更新 : 2017.05.29 19:21

385psを誇る最終モデル、P400SV

最も画期的だったのは、間違いなく、1971年のSVのデビューだった。潤滑系を分離したため、エンジンとミッションとで違う種類のオイルを使えるようになった。

また、ランボルギーニカウンタックを発表したのもこの年だった。カウンタックは、この優美なミウラに比べると角張ったデザインであったものの、公開されるやいなや、誰もがミウラを後継するクルマとして認めた。

しかし、カウンタックが市販されるまでにさらに3年を要したため、その間、さらに15psパワーアップしたSVでつなぐ必要があった。

ニュー・モデルの性能値は、実際にはP400Sとさほど変わらなかったためか、メディアはこのミウラの最後のマイナーチェンジにそれほど反応しなかったのも事実だ。

そこで、話は現代に飛ぶ。筆者は、これまで、分不相応にも数多くの魅力的なクラシックカーを運転する機会に恵まれてきた。そんな筆者でも、運転したことのないクルマが2台存在する。それが、ポルシェ917とミウラだった。

厳密に言えば、2台とも、筆者の運転したことのないクルマのリストから外れかけたことはある。917Kの方なら、2名のいかつい男たちがバーミンガム国際展示場を押して回る際にシートに座り、ハンドルを握ったことがあるし、ミウラは、写真スタジオに搬入・搬出する際に運転したことがある。

しかし、今日は違う。キーを手にし、コースの前に立っている。

美しいマグネシウムのカンパニョーロ製ホイール。

そしてエンジンに火を入れる

ミウラを初めて始動する際は常に緊張が伴う。エンジン火災を起こすことが珍しくはないからだ。しかし、決して驚くような話ではない。キーを回し、アクセルを軽く踏む。エンジンが暖まってアイドリングが安定し、始動時のゴツゴツした挙動が滑らかになるまでわずかにスロットルに力を加え続ける。

エンジンの回転が落ち着いたら、筆者も緊張をほぐす(少なくともそう努める)。もし、ミウラに「欠点」というものがあるとすれば、それはキャビンの設計かもしれない。人間工学的に難があり、誰が乗ってもしっくりこないポジションなのだ。

シャシーのシルをまたいで身体を滑り込ませ、運転席に座る分には問題ないものの、ペダルに足を伸ばし、ステアリング・ホイールに腕を伸ばそうとする決定的な瞬間になるとフラストレーションを感じる。

足が届くように運転席をスライドさせると、頭がフロント・ガラスの上部につかえる。そこで、背もたれを水平方向に倒すと、今度は腕が伸び切ってしまうことに気が付く。エンジン・ベイの向こうにある特徴的なルーバーを通して後方が見える最適な位置に身体を起こしたところ、その状態で運転することは不可能だ。

これが当世風のロード・テスト、つまりグローブ・ボックスの容量でクルマを買うかどうかを決めるようなユーザー向けの記事ではないのが救いだ。人間工学の問題をさっさと頭から追い払うことにし、クルマを発進させることに意識を戻す。水温計の針が上がってくれば、このエキゾチックなイタリアンを発進させもよいという合図だ。いよいよアクセルを優しく踏む。

このエンジンをリビルドしたのは伝説的エンジニアのボブ・ウォレスだ。


特にオイルが暖まる前までは、ギアを確実に入れなければならないものの、1速に入れ、ウェーバー製ダウンドラフト4連キャブの12個のバタフライ・スロットルを開ければ回転数が上がっていく。その途端に、自分がスーパーカーに乗っているという感覚が湧き起こり、ラゲッジ・スペースなどどうでもよくなってしまう。荷物は助手席に積めば良いので、週末のドライブを楽しみたいなら、同乗者など連れて行かなければよい。

胴が少しねじれるために背中がズキズキと痛もうが、ルーバーを通して後方の道路状況を確認できなかろうが、そんなことは問題ではない。エンジン周りの熱や空気の流れを処理するためにデザイナーが悪戦苦闘した末のことなので、文句を言っても始まらない。

さらにスロットルを踏み、回転数が上がるのを確認してから2速に押し込む。耳のすぐ後ろにあるV12エンジンの奏でる勇壮なシンフォニーに完全に同期するように速度計の針が着実に上がっていく。そして、夢中になっていた。

その本質はやはり野獣だった

一目惚れほど素晴らしいものはない。初めて運転したクルマに夢中になってしまうと、その分、神経がお留守になってしまう危険性がある。タイヤが路面の凹凸を拾い、車体が驚くほど揺れ、片側に数インチ跳ねたように感じた。その衝撃が筆者を現実の世界に引き戻し、この荒れ狂う雄牛が本質的には野獣であることを思い出させる。

ミウラの42:58という重量配分は理想からはほど遠いため、このようなコースで許されるかなり控え目な速度でも、コーナーに突入する前に十分に減速しなければ、フロントの挙動が少し落ち着きを失い始めるように感じる。

しかしながら、ポール・フレールが1967年に行ったMotor誌のロード・テストで見抜いたたように「パワーがあるため、タイトなコーナーでは、いつでもドリフトさせることができる」

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