フェラーリ初のスーパーカー、ベルリネッタボクサー その実力は

公開 : 2017.04.01 11:31  更新 : 2017.05.29 18:52

ポルシェ911が2台買えた

勇壮なエンジンと見事にバランスのとれたシャシー、そしてピニンファリーナのボディの組み合わせは、高級感にあふれる。1975年当時さえ1万7487ポンドもしたBBは、本当に欲しい人のためのクルマだった。その金額であれば、ポルシェ911を優に2台買えたはずである。買い手は、ロンドンの銀行家、地主階級、そしてロックスターに限られた。実は、英国に最初に届いた365BBの1台を買ったのが、ピンク・フロイドのリック・ライト(故人)だった。

フェラーリ専門店フォスカーズのエド・キャロウが指摘するように、「ボクサーは、その超高級性ゆえに、日常的に運転されることはありませんでした。このため、ディーノほど損耗がひどくない傾向にあります。その点では、多様な材料を使って製作していることも役に立っています。ただし、ドアの外板が浮いている場合があります」。BBの場合、パネルの接合に関する評判は決して芳しくはないため、事故による損傷からねじれたチューブがないかシャシーをチェックした方が良い。

「われわれの」クルマの場合、最初のオーナーは、レースの熱心な後援者であり、生涯にわたるフェラリスティでもあった伝説的投資家かつ道楽者のリチャード ‘ディック’ ウィルキンスだった。その後、オオハシをキャラクターに使ったギネスビールのブレインボックストウカン・キャンペーンで有名になったテレビCM会社のジョン・デビッド・パーキンスが買い取り、80年代後半まで愛蔵していた。

トレードマークになっているドッグレッグ型5速トランスミッション用オープンゲート。

一度日本に渡ったというそのヒストリー

このフェラーリは、その後、ランボルギーニ専門店ヒーズマンズのバリー・マルティナの仲介取引によってフランスに渡ったが、それ以降の足取りははっきりしない。キャロウは語る。「われわれは、昨年、BBを日本から買い、元のロッソキアロに塗り直し、黒を時々お目にかかる光沢からマットブラックに仕上げ直しました。最近のお客様は、特に365の希少性が高いため、オリジナルな姿の再現度を求めています」

彼は、こう付け加えた。「また、BBの場合、シャシーナンバーがエンジン上部にあり、また、その下にあるミッションの上ではっきりと視認できるため、シャシーナンバーが一致しているかどうかを確認することも極めて容易なクルマです」

メカの点でも、極めて魅力的なクルマだ。BBは、オーバーヘッドカムを駆動するために、チェーンではなく、ベルトを使った最初のフェラーリであるため、その詳細な保守履歴があれば、エンジンを降ろす必要のある作業ではあるものの、ベルトをどの程度の頻度で交換したか、また最後に交換したのはいつかがわかるはずである。ちなみにBBのベルトは3年ごとの交換が推奨されている。ほとんどのスペア部品が容易に入手できるものの、安くはない。また、定期的に使われていたクルマについては、電気系統の奇妙な障害を経験する場合がある。

水平対抗12気筒エンジンは、ウェーバー製4連キャブレターを備え、勇壮に聞こえる。


キャロウは、過去数年間にわたるBBの価格の急騰により、市場に出回る365の数が増えると予測する。「おそらくは、およそ90台製作された右ハンドルの中で、英国に来たのは58台しかないためでしょうが、売りに出ているのを見かけるのは珍しいです。オーナーの皆さんがガレージで保管し、修復コストが障害になってきたものの、価格が上昇した現在、売却できる可能性が高まったのです」と彼は言う。

現在、ミウラに比べればお値打ちな相場

「BBに対して『お値打ち』といった言葉は使いたくはないのですが、それでも一番安いミウラと比べても半額にしかならないボクサーはお買い得だと思います。修復前の365BBを16-18万ポンド(約2950-3300万円)で、また、それなりの業者からであれば25-28万ポンド(約4600-5150万円)で見つけることができるかもしれない。」とキャロウは語る。一方、今回取上げたクルマは、小売値で35万ポンド(6475万円)近くになる可能性がある。

このクルマについて筆者の気に入らないのは一点だけである。それは、色だ。これほど美しいスタイルには、より繊細な色合いがふさわしい。おそらくは、どこかで生き伸びているに違いない最初の右ハンドルのような素敵なメタリックブルーのような。あとは、そのクルマを見つけ、35万ポンドを用意するだけの話だ。誰にだって、夢を追いかける権利はある。

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