コスワースの血統 まさに生え抜きのレーシングカー、シエラRS500コスワース
公開 : 2017.04.08 00:00 更新 : 2017.05.29 18:53
シエラ・コスワースよりも更に過激になったスタイリング
RS500のスタイリングは、信じられないことにシエラ・コスワースよりもさらに極端なものになっている。フロントには、ダウンフォースを高めるスプリッターが装備され、リアの鯨の尾のようなテールにはリップが付けられ、トランク・リッドにもスポイラーが追加された。このクルマは確かに人目を引くとリンフットも言う。古めのスーパーカーと並べて駐車しても、こちらに人が集まってくるというが、それも納得だ。
それに対してインテリアは控え目で、少々がっかりさせられる。ブースト計は高いパフォーマンスをほのめかすし、身体のラインに沿うシートやRS500のバッジもそう感じさせる。しかし、それらを除けば、元はあまりぱっとしないハッチバックなのがよくわかる。ドライビング・ポジションは良好で運転しやすいクルマではあるものの、最初はあまり飛ばさない方が良い。通常走行では、人を怖じ気づかせるものは何もないが、右脚を踏み込めばとてつもないパワーが炸裂することを忘れてはならない。
4000rpmからの暴力的なパワー・デリバリー
背中を蹴飛ばされるような急加速がやって来るまで、思ったよりも時間はかかる。スロットルをいっぱいに踏み込んだところで、レブ・カンンターの針がゆっくりと上がり始めるのを除けば、ほとんど何も起こらないのだ。やがて回転数が4000rpmに達すると、ターボチャージャーが目を覚まし、その瞬間、目を見張らせることになる。当時、コスワースはスーパーカーにも後塵を拝ませることができたが、今でも高笑いしたくなるほど速い。
公道仕様は、シエラをモータースポーツの世界で闘えるように設計されたモデルでもある。リンフットのクルマをシルバーストンで走らせることにしたのは、実はもう1台の方と走らせるためなのだ。1989年にはクリス・ホッジス(ブルックリン・モータースポーツ)の駆るRS500のレーシング・モデルがブリティッシュ・ツーリング・カー・チャンピオンシップを獲得している。そのレース仕様車は、それから元レーサーのクレイグ・デイヴィスの手に渡り、今でもヒストリックカーレースで活躍している。
レーシング・モデルにシルバーストンで試乗
正午までの時間を使ってホッジスは、もう一度シエラに馴染むための試走を繰り返している。ツイン・プレートのクラッチにやや問題はあったが、天候が急転しそうな気配を見せる中、所有者のデイヴィスは私に数ラップ走ることを許してくれた。しかし、ホッジスでさえピット・レーンでエンストするのを目にしていたから、いささか不安な気持ちで私はクルマに乗り込むこととなる。
私とホッジスはほぼ同じ身長だから、シートはあらゆる操作に最適なポジションになっていた。ダッシュボードは基本的にオリジナルのままだが、真正面に最新のスタックのレブ・カウンターを装備し、フューエル・ポンプのスイッチとイグニッションはステアリング・ホイールの直ぐ右に設置された。それ以外は、予想した通り、情け容赦ないほど何もかもむき出しだ。