コスワースの血統 まさに生え抜きのレーシングカー、シエラRS500コスワース
公開 : 2017.04.08 00:00 更新 : 2017.05.29 18:53
スティーブ・ソバーはかく語りき
1987年と88年にRS500でグループAに出場したスティーブ・ソパーは「野獣だとは思わなかったけれど、きっと野獣だったんだね。かなり長いターボ・ラグがあり、それに自分のドライビング・スタイルを合わせなければならなかったから。初めはパワーを感じないのに、いきなり506psがどかんと来る。青い煙を吐き、ターマックに黒いラインを残して、スーパー・スターのように疾走することもできたよ。しかし、そんなことをすれば速く走れないし、重要なのはラップ・タイムを短縮することなんだ。そのためには信じられないくらいにきちんとした操作が必要だったよ」と話している。
ソパーは、1987年にツーリング・カー・レースのブルーリボン・イベントで2回、またニュルブルクリンク24時間とバサーストで優勝した。しかし、その6ヶ月後、バサーストに関しては、ボディワークの違反でエッケンベルガー・チーム所属のRS500は失格になってしまう。
「シエラは文句の付けようのないクルマだったよ。ニュルブルクリンクではクラウス・ニーヅビーズやクラウス・ルードウィッヒと組んだけれど、自分もサーキットを良く知っているつもりだったが、この2人は排水溝や縁石を含め、サーキットを知り尽くしていたね。耐久レースのときは真夜中に雨が降って霧がかかり、コンディションが悪化すると、2人から『無理はするな』と言われたよ。昼でも進む方向を見失いがちだからそんなことするつもりもなかったし、あの日は真っ暗な上に霧もかかっていたんだ。明るい日なら彼らに迫れるけれど、夜間にウェットでは、そうはいかなかったな。このレースでの優勝は自分のキャリアの見せ場だったのに。バサーストでも、2人に持って行かれるまではうまくやったよ。オーストラリアのチームは規則違反の検査を受けても、たいていすぐに出てきたのに、われわれが検査を終えたのは2時間後だよ。FIAワールドチャンピオンシップのレースで、バサーストはシーズン後半の日程だったんだ。それまで違反を取られることはなかったのだから、おかしな話しだよ」
「アーチをもう2cm低くしていれば、皆がハッピーでいられたことが後になって分かったんだ。少し傲慢になっていたのかもしれないな。ルディ・エッケンバーガーは違反ではないと考えていたのだから、取り外す理由はなかったんだよ。それにクルマに傷を付けようものなら奴はカンカンになっただろうから。きれいに塗装されたホイールアーチを外すなんてできっこないのに」
ターボ時代の象徴とも言えるツーリングカー
ウェット・コンディションのシルバーストンを数ラップした後に、シエラでノルドシュライフェやバサーストを走るなんてとんでもないことだと思った。当時は、F1にしろ、ラリーやツーリングカーにしろ、ターボチャージャーが絶頂の時代である。RS500は、その時代の象徴的存在だったのだ。
「技術はもちろん進化している。しかし、当時、このクルマはほぼ最高水準にあったんだ。RS500は、レースのために生まれたクルマだからね。開発の初期段階に撮られた写真を見て、『これだ。これこそ正しいレーシングカーだ』と思ったのを覚えているよ」 最後にソパーはそう語ってくれた。
フォード・シエラRS500コスワース
生産期間 | 1987年 |
生産台数 | 500台 |
車体構造 | スティールモノコック |
エンジン形式 | 鋳鉄ブロックアロイヘッド直4DOHCターボ1994cc 、フューエルインジェクション |
エンジン配置 | フロント縦置き |
駆動方式 | 後輪駆動 |
最高出力 | 227ps/6000rpm |
最大トルク | 28.6kg-m/4500rpm |
変速機 | 5速マニュアル |
全長 | 4460mm |
全幅 | 1730mm |
全高 | 1375mm |
ホイールベース | 2610mm |
車両重量 | 1207kg |
サスペンション | (前)マクファーソンストラット/コイル/アンチロールバー (後)セミトレーリングアーム/コイル/ダンパー/アンチロールバー |
ステアリング | ラック&ピニオン |
ブレーキ | (前)ベンチレーテッドディスク (後)ベンチレーテッドディスク |
0-97km/h | 6.2秒 |
最高速度 | 246.2km/h |
燃費 | 0.6km/ℓ |
現在中古車価格 | 420万円〜925万円(公道仕様) 1400万円〜3700万円(レース仕様) |