史上最高の魅力を備えた2台の究極の対決、250GT SWB vs DB4GT
公開 : 2017.04.09 00:00 更新 : 2017.05.29 19:34
フェラーリ250GT SWB
エンジン ★★★★★
アストンのエンジンが傑作だとすれば、フェラーリのV12コロンボ・エンジンは奇跡の域に達している。このエンジンは、テスタロッサ、250GTO、275GTB、そして当然ながらSWBなど、フェラーリ神話を生み出した数々の名車の心臓部を担ってきた。
ヴェリア製タコメーターの目盛りは8000rpmまで。
V12にしては驚くほどコンパクトなユニットだ。目立たないフェラーリのロゴが刻まれ、黒の結晶塗装を施した地味なカム・カバーの下にアルミ製の芸術的なエンジン・ブロックと放熱フィンがほぼ隠れている。SWBの場合、冷たい外気をウェーバー製ダウン・ドラフト・キャブ3基に誘導する大きなトレーも、全てを隠している。SWBのエンジンは、観賞用ではなく、走るためのものだ。あらゆる特徴が、その事実を明白に主張している。それでも、ガラス・ケースに入れれば、鑑賞に十分に堪えるエンジンだ。
大ぶりなレース仕様の燃料キャップ。
アストンの場合と同様、ツイン・ディストリビューターが対称的に配置されているものの、SWBの場合には、ひとつのディストリビューターが、シングル・オーバー・ヘッド・カムシャフトに覆われたそれぞれのシリンダー・バンクに給気している。しかし、このエンジンに出会った人々の記憶に焼き付いて離れないのは、そのエンジン音だろう。V12のエンジン音は、これまでに表現し尽くされているため、筆者独自の言葉で説明するのは難しい。だが、うなり声にも似たメカニカルな打撃音、長く高い叫び、それから伝わってくる回転することへの渇望は、聴く者を興奮させるような伝染性がある。あくまでも走ることを求めてやまず、聴く者がともに走りたくなるような音質だ。
ドライブトレイン ★★★★☆
SWBのシフト・レバーは、トランスミッション・トンネルから必要以上に高い位置まで突き出ており、溝を刻んだシンプルな球状のノブが付いている。動きは軽く、メカニカルでありながら、(特に癖のあるアストンと比べると)非常に滑らかだ。フェラーリのトレード・マークであるクローム・メッキのゲートを期待する向きには申し訳ないのだが、飾り気こそないものの、魅力的なレザーカバーに覆われた細身のレバーがインテリア全体とマッチしている。
WBは見事に均整が取れている。
アストンの場合と同様、標準では4段しかないポルシェ・シンクロを備えた自社製のギアボックス。シフト操作が快適なのは、恐らく適切なギア比が理由のひとつであろう。そして、このSWBのファイナル・ドライブ・レシオが4:1であること(オプションで広い範囲から選べる)や、また、エンジンの素晴らしいサウンド、そして、このトランスミッションとの相性が良いことも理由に挙げられるが、時速150km/hを超えると、どうしてももう1段欲しくなってくる。回転数が上がりにくいように感じるからではない。アクセルを踏み、160km/hを超えても、実際にはエンジン音がそう大きくなるわけではなく、エンジン音のピッチが上がるだけだ。それでも、やはり5速まであれば、最高速度が向上する可能性がある。
華麗な後姿。
クラッチは心地よい重さで、特に力を込める必要はない。アストンの場合と同様、リミテッド・スリップ・デフを装備している。