史上最高の魅力を備えた2台の究極の対決、250GT SWB vs DB4GT
公開 : 2017.04.09 00:00 更新 : 2017.05.29 19:34
アストン マーティンDB4GT
動力性能 ★★★★☆
このDB4GTのエンジンが4.7ℓにボア・アップされているため、最後にSWBと比較する時にエンジン性能を1段階割り引かなければならなかった。標準仕様のDB4GTの最高出力306psに対し、革表紙の履歴ファイルに綴じられたエンジン・ベンチの値は360psもあるため、筆者のインプレッションも、同じ割合だけ割り引いて読んでほしい。もし、工場出荷段階のエンジンにこれだけのパワーがあったなら、筆者は、アストンのエンジン性能に迷わず星5つを与えたに違いない。
ヨーロッパのマッスルカーというものが存在したとすれば、まさにこのようなクルマではないだろうか。絶え間ないパワーの奔流が、ある種シルクのような滑らかさで押し寄せてくる。V8ではあり得ないフィーリングだ。出力にピーキーな感じはなく、ペダルを強く踏むほど、上昇していく。DB4GTは、時速160km/hを超えても、まだ助走段階に過ぎない。現代の多くの高性能車と同様、それほどスピードが出ているという感慨はなく、その点もアストンへの信頼感を高めている。
ほどほどのスピードなら、エンジンは驚くほど制御しやすく、テスト・コースに向かう混雑したM25号線でも極めて運転しやすかった。2速でも楽に十分な速度を出せるDB4GTは、運転するのにスーパーヒーローである必要はない。だが、ドライバーをスーパーヒーローにでもなったかのような気持ちにさせてくれるクルマではある。
ハンドリング ★★★★☆
DB4GTとSWBとの性格の違いが目についたのがハンドリングだ。アストンはグランド・ツアラーとしての伝統に従い、オスカー賞なみの名演技をする。公道において長距離を本当に高速に移動する能力。その点において、あの時代には、DB4GTの性能に近づけるクルマさえほとんど存在しなかった。また、そのしなやかな乗り心地は、長距離を極めて快適に高速で移動できることを保証する。高速コーナーでアクセルを踏んだ場合の安定性と確実性のレベルは驚異的であり、幅の細いタイヤを通じたグリップの良さは、物理法則に反しているのではないかと思うほどだ。ただの人間でしかない筆者に、トラクションを切るような芸当はできなかった。
しかしながら、コリン・ファースがワイルドスピード MEGA MAXのヒーローを演ずるなど想像もできないのと同様、DB4GTにも、スポーツカーではなく、GTであるがゆえの限界があり、特にタイトなコーナーになると問題点が露わになる。そうしたコーナーでは、ステアリングがかなり重くなり、それまで気づかなかった大きなアンダーステアが発生する。ラインが大きく膨らんでも、トラクションの効いたテールが流れる気配はない。ワインディング・ロードでステアリングをロック位置からロック位置へと切り直すと、その効果が増幅され、フェラーリと比べると、アストンが不器用にさえ感じられる。また、恐らくDB4GTの方が重いため、フェラーリほどブレーキにキレがない。そのため、このようなコーナーでは、フェラーリほど自由にスピードを殺すことができない。