まさに公道の王者、1200ps、最高速度415km/h、ヴェイロン・スーパースポーツ
公開 : 2017.04.10 00:00 更新 : 2017.05.29 19:00
最高速度431km/hのギネス記録
ル・マンのエース、ピエール=アンリ・ラファネルが、自分の運転するスーパースポーツで、2010年にフォルクスワーゲンのエーラ・レシエン・オーバルテストコースを周回し、431km/hの記録を認定するようギネスブックに求めたが、その2番目のキーが改造であると見なされ、認定が取り消された。しかし、ギネスは、異議申立てを受け、リミッターにより車両やエンジンの基本的な設計が変更されていないことを理由に認定を復活させた。その後、ヘネシー・ヴェノムGTが435km/hを記録したものの、テストコースを一方向だけに走った記録だったため、ヴェイロンがまだギネス記録を保持している。また、マクラーレンF1は、1993年、ナルドでリミッターを外して最高速度386km/hを達成。これが自然吸気での世界記録となっている。
その後、ヴェイロンでラファネルを破った者はおらず、ラファネルも自分の記録を急いで更新するつもりはないようだ。「われわれが時計回りに高速走行したとき、最高の出来だと思ったのですが、記録が認定されるためには時計回り、反時計回りで計測する必要がありました。反時計回りに走ったところ、妙な振動が出たのです。最初は原因が誰にもわかりませんでした。それにはドキッとしましたが、路面のせいだったことが判明したのは速度記録を達成した後のことでした。これまでエーラ・レシエンを反対方向に走行したクルマはなかったため、小さな波紋が振動の原因になるとは思ってもいなかったのです。ヴェイロンの洗練された挙動は独特で、ドラッグスターとはまったく異なるものでした。全速で走行すると、たった1秒でサッカーグラウンドの長さを駆け抜けるのです」
実は運転しやすいクルマでもある
ラファネルは、人々の関心がヴェイロンの最高速度にばかり向いていると語る。「最も衝撃的だったのは運転のしやすさで、この決定版のモデルでさえも安全性に配慮した設計がされています。スーパースポーツは、他のクルマとは力学的に完全に異なっています。ステアリングが軽く、シャープで、しかもブレーキが優れています。また、エンジンのフィーリングも違います。それは3000-5000rpmといった回転域でフルブーストが得られ、よりスポーティなドライブが可能ということです。性能の密度という点でヴェイロンにかなうクルマはなく、その驚くべき限界に迫れるドライバーはほとんどいません。ヴェイロンは、アドレナリン全開のマシンであり、あらゆる操作をスムーズに行う必要があります」
鍵となるのがESPシステムだ。これは、ドライバーの積極的過ぎるステアリングやアクセル操作を感知した場合に、クルマがまっすぐになるまで、出力を劇的に絞ることにより、「アンダーステアコントロール」に切り替わるというものだ。「確かにESPを切ることもできます」と彼は語る。「けれども、これほどの重量のエンジンを背負って、冒険をして良いクルマではありません。そのような無謀な運転はヴェイロンの設計思想に反しています。ヴェイロンが弱点を見せるのは雨の時だけです。深い水溜まりをタイヤが処理できないからです」