まさに公道の王者、1200ps、最高速度415km/h、ヴェイロン・スーパースポーツ

公開 : 2017.04.10 00:00  更新 : 2017.05.29 19:00

理解を遥かに超えた加速力

ラファネルと数周するだけで、ヴェイロンの爆発的な加速がすぐ判明する。AUTOCAR誌が2011年にテストした際、ヴェイロンは様々な記録を塗り替えた。0-322km/h加速の22秒という記録は人が理解できる領域をほとんど超えている。しかし、本当に印象的なのは、地平線に向かってロケットのように突進しても不安要素が一切存在しない点だ。その瞬間、テストコースの直線がとても短く感じられる。また、急ブレーキを踏んでも、コンポジット材でできた大型のディスクの効きは極めて良く、異常な振動も、そわそわする感じもない。エアブレーキによって支援され、減速する際の挙動は、発進する際と同じくらい印象的である。

ラファネルがヴェイロンへの強い愛着を持っていることは明白であり、スーパースポーツの大胆なツートンカラーさえ気に入っている。「私は、このデザインが気に入っています。というのも、最初のレース用ヘルメットがマルボロ・カラーだったからです」

墓石を連想させるダーク・カラーでまとめ上げられたインテリア。

非現実的な速度域でこれほど洗練されたクルマはない

運転席から見ると、暗色のインテリアは飾り気がなく、それは墓石を連想させる。過剰なまでに黒が使われた仕上げは、初期のヴェイロンの明るいデザインとは対照的である。しかしながら、超高速加速性能を解放し、視界がぼやけてくると、細かい美感は気にならない。驚異的な発進速度にもかかわらず、ヴェイロンの挙動は、フルスロットルに至るまでの間、完全に落ち着いている。ステアリングの重さは最適であり、4輪駆動が、1200psの馬力を戦慄するほど上手に処理している一方、7段DSGオートマティック・トランスミッションは、それぞれの切り換えをシームレスに行う。このような非現実的な速度域において、これほどまで洗練されていることに仰天する。人々はヴェイロンに過激な性能を期待しがちであるものの、その最大の成果は、このような巨大な出力を見事に落ち着いて供給しているその方法にある。他のスーパーカーの方が個性豊かなものの、ヴェイロンは、それまでの限界を押し上げた。

ステアリング・ホイールにつけられたスーパースポーツのレタリング。


噂によれば、ピエヒは、ル・マンのミュルサンヌ・ストレートでの速度記録に対抗するため、ヴェイロンの目標を407km/hに設定したという。ミュルサンヌで400km/hの壁を破ったのは、ザウバーC9とWM-プジョーP87のみだった。しかし、ヴェイロンが実に乗りやすく、老婆でさえ運転できる点を考えると、レーシングカーとのこのような比較は無意味に思えてくる。

ブガッティ・ブランドで100万ポンド(1億8,500万円)、1014ps、最高速度402km/hのスーパーカーを製作します」。フォルクスワーゲンのピエヒ取締役会会長が2000年のジュネーブサロンでそう発表したとき、それが実現し、ましてや売り切れるなどとは誰が想像しただろうか。それから15年後、息をのむようなヴェイロンは、今なお新しい世代の愛好家のポスターを飾るクルマ。その不吉なまでに黒いボディを身にまとい、たくましい、硬質な存在感に匹敵し得るクルマは、バットモービルだけではないだろうか。


ブガッティ・ヴェイロン16.4スーパースポーツ

0-100km/h加速 2.5秒
0-200km/h加速 6.7秒
0-300km/h加速 14.6秒
最高速度 415km/h
全長×全幅×全高 4462×1998×1190mm
ホイールベース 2710mm
乾燥重量 1838kg
エンジン W型16気筒7993ccクワッド・ターボ
最高出力 1200ps/6400rpm
最大トルク 153.0kg-m/3000-5000rpm
ギアボックス 7速DSG
サスペンション 4輪ダブル・ウィッシュボーン
ブレーキ 4輪カーボン・セラミック・ベンチレーテド・ディスク
タイヤ 265-680ZR500A / 365-710ZR540A
燃費(混合) 4.3km/ℓ

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