野ざらし発掘 ーー オースチン・ヒーレー・スプライト・クーペ
公開 : 2017.04.15 11:00 更新 : 2017.06.01 00:23
世界各地で、荒野に野ざらしになっている可哀想なクルマ達がいます。この「野ざらし発掘」では、倉庫に眠りっぱなしになっているクルマや、文字通り野ざらしのままで放置されているクルマを取り上げてきます。第1回目は、数々の耐久レースでクラス優勝や上位入賞をはたしたオースチン・ヒーレー・スプライト・クーペです。
ドナルド・ヒーレーに直訴して手に入れたプロトタイプ
ペンシルバニアのデラウェア・バレーでBMCディーラーを経営していたステファン・ピトケアンは、1964年に行われたセブリング12時間に出場したオースチン・ヒーレー・スプライト・クーペの颯爽と走る勇姿に感動を覚えた。このレースで、スプライト・クーペはクラス優勝を果たしたのだ。彼は、ドナルド・ヒーレーに祝福を送ると共に、このクルマを購入することは出来ないかという書簡をしたためた。ヒーレーの答えはこうだった。
「通常ではプロトタイプを売ることはできない。しかし、あなたには例外を認めよう」
提示された価格はオーバーホール費用込みのものだった。というのも、彼に譲られたスプライト・クーペは、このレースで僅かに9周を走ったところでリア・アクスル・トラブルでリタイアしたクルマだったからだ。
ピトケアンは、いくつかのヒルクライムにこのクルマで出場した後、およそ700マイル(1,130km)ほど走ったところで、このクルマを引退させることにした。
ピトケアンの親友であったカート・リターラーが彼のプライベート・コレクションのために譲り受けたが、それも1985年までのことだった。
その後、このクルマの処分を任されたエージェント、ダニエル・ラプレーは、その時のスプライト・クーペの状態を以下のように話している。
「驚くべき状態です。僅かに走行距離は795マイル(1,280km)で、オリジナルのマグネシウム・ホイールとダンロップ・タイヤを履いています。その他、ディテールはファクトリーを出た状態であると言えます。さすがにエレクトリカル・コンポーネンツは、時の変化を感じさせるものがあります。ガラスとプレクシグラスはオリジナルのままで、多少手を入れる必要があるものの、エンジンに火を入れ、復活させることは可能と考えています。」
ダッシュボードには、「ステファン・ピトケアンのスペシャル・オーダーによる」とドナルド・ヒーレー直筆のサインもある。
このクルマは現在アメリカの有名なコレクター、ステファン・ブルーノの手許にある。
※ 編集部では日本国内で野ざらしになっているクルマの情報もお待ちしております。写真とコメントを編集部までお送りいただければと思います。