ミドル・セダン決定戦:後編 ―― BMW 5シリーズ vs メルセデス・ベンツEクラス vs ジャガーXF
公開 : 2017.04.16 11:00 更新 : 2017.05.29 18:37
E350dは飛ばさないほうがいい いっぽうXFは?
E350dは、水に浸かったカバのようにのんびりとして、下手をすればBMWより500kg近く重いクルマで、このコースでは置き去りにされても仕方ないと思えた。
ところが、実際にはちょっと忘れがたいような走りっぷりで、カーペットのようにソフトな脚回りは、必ずしも重たげに感じられるものではなかった。
エア・サスペンションは横方向のボディ・コントロールを担い、無気力な印象は影を潜める。そこから生まれるフラットさは、ハイテンポで走る能力への信頼を高めてくれるものだ。
グリップ・レベルが思いのほかみごとだったのも、ここに来ての発見だ。残念なのは、欠点というより不可抗力とでも呼ぶべきものだが、常に悠然としていて、活発さを試す術が、メルセデスには備わっていないことである。
よりハードな走行モードを選べば、たしかに眠っていた筋肉を目覚めさせるように力強さは増すが、無味乾燥なステアリングに血が通うことも、シャシーに勢力が漲るような感覚も、いっこうに伝わってこないのだ。
XFはというと、高速道路を淡々と走ることも、Pゼロを路面に押しつけるような走りも難なくこなす。1750kgの重量を、電子制御デバイスで包み隠そうとするようなことはしない。
むしろ、それをうまく利用して、まるで目に見えない軸でも立てているかのように、たとえるならばスピード・スケートのごとくコーナーを駆け抜けていく。