2台のスモール・フェラーリ、ディーノ246GT & 308GT4
公開 : 2017.04.22 00:00 更新 : 2017.05.29 18:52
308GT4の引き締まったV8サウンド
始動すると背後のV8がわずかに気になる程度の音を奏でるが、サウンドのほとんどは4本出しのテールパイプを経由したものだ。とは言っても3ℓエンジンの引き締まったボンゴのようなビートを感じさせるには十分な音量であり、世界がいつの間にか慣れ親しんでしまったその辺のたるみきったV8とは全く違った音質である。
ギアボックスに関しては全くのフェラーリであり、それらしからぬところは何もない。多少重いクラッチと長いレバーの操作はそれなりの労働を要求するが、トレードマークであるオープン・ゲートの5本指の間を行き来するギア・チェンジは素早く、オルガン型ペダルのスロットルを踏み込めばウェーバーに一気に燃料が供給され、気持ちのいいペースで走り出していく。
「星型」のアロイホイールは80年代のフェラーリに一貫して使われ続けた。
ステアリングは実に楽しめる。軽くて素晴らしくシャープで、細めのモモ製ホイールを通じてまさに適正な量だけの重みとフィードバックが返ってくる。このダイレクト感に加えて見事なハンドリングが備わっており、重量級とはほど遠いGT4を軽やかな足取りで走らせ、連続するアペックスへ短距離走者のように突っ込み、ヨハン・ブレークのような軽快なフォームでコーナーを鮮やかに抜けていく。パワフルでしかも実に優雅だ。
最大の驚きは乗り心地だった。予想外に柔らかく、よほどハードに攻め込まない限り実に快適であり、このジュニア・スーパーカーはそれでいて足元が引き締まっていて、反応を要求されたときにわななくようなことは絶対にない。全てのミドエンジンのクルマと同様に、無作法な扱いをすれば即座に鋭い牙を剥いてくることは間違いないが、敬意を持って扱えばたとえぎりぎりまで攻め込んでも限界を越える前に穏やかなスライドではっきりと警告を与えてくれる。