text & photo:Kentaro Nakagomi(中込健太郎)
2014年に創立100周年を迎え、最近ではギブリに加えてSUVのレヴァンテの登場など話題に事欠かないマセラティ。しかし、その歩みの途中モデナからその灯が消えそうになったこともあった。それを救ったのがアレッサンドロ・デ・トマゾであり、その難局を乗り越え、復活を遂げるきっかけを作ったクルマこそBITURBO(ビトルボ)である。
当時好景気に見舞われていた日本でも、このクルマはマセラティの名を日本に広めるのに大いに尽力し、多くの好事家や映画やテレビで大活躍するスター、作家などの文化人の目に留まり、愛されたクルマでもある。とにかく高貴で高い志で高性能な名車を多数世に送り出してきたマセラティが、それまでのテイストを残しつつ、よりコンパクトなクルマにまとめ上げたクルマこそ、このビトルボだ。
ここから、その名が示す通りツイン・ターボエンジンを搭載したモデルがしばらくマセラティの主力車種となり、以降1999年までの3200GTを含めたすべてのマセラティ車へと発展を遂げることになる。そんなエポックメイキングで、マイルストーン的な存在でもあるビトルボ・シリーズだけのイベント「BITURBO FESTA 2017」が、静岡市の日本平ホテルで開催された。
2010年にも開催されたこのイベントは、ルーティーンやノルマで開催されることもなく、会場となった日本平ホテルの全館改装なども重なり、以降開催されずに7年の歳月が過ぎてしまった。しかし、リニューアルした日本平ホテルで集えることになったこともあり、有志が集うというくらいの規模で、せいぜい30台程度の台数を想定して再びの開催が決まったのが今回のミーティングだった。
しかしふたを開けると、オリジナル・ビトルボから3200GTまでと厳格にビトルボ・シリーズに限定したにもかかわらず参加車両は53台! 参加人数は、当日ビトルボ・シリーズ以外のクルマで来場した参加者も含めて90名にも上り、主催者の目算を大きく上回る仲間が、遅めに咲いた桜の残る日本平に集まった。
一部の参加者は前日から泊まり込み、愛車やビトルボの話に夜が更けるまで花を咲かせていた。一般には維持することが難しいクルマ、故障の絶えないクルマというイメージの強い車種だが、そうした話はほとんど聞かれず、ほかのクルマにない歓びを味わわせてくれるクルマ「余車をもって代えがたい」クルマであるという感動を参加者たちは共有していた。
日曜日は、春霞の向こうから富士山ものぞかせる好天に恵まれ、日本平ホテルの芝生庭園に並ぶ愛車を愛でながら、同好の士と充実のひと時を過ごしていた。とはいえ未来永劫何もないクルマではないことも知るビトルボ・オーナーたち。だからこそ「人もクルマも元気に集えること」自体の歓びが実はこのイベントでの最大の収穫だったのかもしれない。
-
会場の日本平ホテルには、例年に比べて遅く見頃を迎えた桜が残っていた。
-
前日から集った有志は撮影も兼ねて日本平パークウェイの走行を楽しんだ。
-
オーナー達は愛車を、サイズが良く艶やかだと言う。要は替りがないのだ。
-
一貫したイメージながら、細かい部分の作り分けが細かい。工芸品の域だ。
-
スパイダー・ザガートを強化しエンジンもチューンしたカリフ。貴重だ。
-
‘90年代のモデルはモダンな雰囲気だが、凝った造り込みはクラシックだ。
-
ここからビトルボの歴史は始まり、今のマセラティがあるのだ。
-
色の違いでぐっと雰囲気が変わる。クールだし愛嬌がある。そして洒脱だ。
-
ビトルボ・シリーズの車種は、最近世界的に再評価されつつあるようだ。
-
大変貴重なギブリ・オープンカップも参加。東京モーターショー展示車だ。
-
ビトルボ出身のクアトロポルテ。ガンディーニのデザインは今も美しい。
-
シャマルもギブリもボクシーな印象のボディデザインはかなりグラマー。
-
ビトルボ系のスーパーカーと言ってもいいシャマル。それでもジェントルだ。
-
ギブリ・カップ。ブルーのボディ・カラーは目が覚めるようだ。
-
参加者のブリーフィング。アットホームな雰囲気だった。
-
素敵な見学者も。シングル・ナンバーのいすゞベレット。眼福。
-
素晴らしい雰囲気のディーノ308GT4を囲んでたちまち話に華が。
-
これだけのビトルボに囲まれることは、こうした機会に限られる。
-
複数のグループでパレード・ランをしながら芝生庭園に。先頭は430。
-
日本平のすそ野に心地いいビトルボ・サウンドを響かせながら参加車達が行く。
-
散り始めた桜の下を行くスパイダー・ザガート。こういう絵が妙に似合う。
-
ビトルボと222のヘッドライト周りの処理の違いにも気づかされる。
-
桜に出迎えられたクアトロポルテたち。ゆっくりとした走りも様になる。
-
桜の下を行くスパイダー・ザガート。コンパクトなボディで小道も造作ない。
-
参加者はジェントルで芝生を蹴上げるようなクルマはいなかった。
-
春霞の向こうに富士山の雄姿を拝むことができた。
-
小さなエンスージァストも登場。将来が楽しみである。
-
ちなみに他のイベントでも、ビトルボ系マセラティは子供達の人気が高い。
-
最終年式でも20年前のクルマ。これだけの台数が集えたことは有意義である。
-
3200GTは残るクルマと土に帰るものが篩いにかけられている時期だろう。
-
100本の矢の集いをイメージしたフェスタのロゴ。早川渡氏のデザインだ。
-
全員で記念撮影。桜と、富士山と、マセラティ。まさに絶景だ。
-
スパイダー・ザガートのシフト・ノブ。手抜きのない小さなマセラティだ。
-
実はシャマルより少ないカリフ。秀逸な設計で走りを楽しむための一台だ。
-
222なら親子で参加。名車の継承はこうして受け継がれていくのだ。
-
こちらのシャマルもオーナーの拘りの1台。応えてくれる懐の深さは別格だ。
-
1台1台コメントを集める実行委員の白上氏。
-
スパイダー・ザガートはハレのクルマだ。こういう舞台がよく似合う。
-
昼食会では海外からのビデオ・メッセージも紹介された。
-
挨拶するマセラティ クラブ オブ ジャパンの越湖会長。試作車を紹介。
-
今回の開催に表敬し、その試作車の写真は実行委員の白上氏に進呈された。
-
乾杯のあと、一斉に庭に並ぶ愛車を撮りだす参加者たち。
-
各テーブルでは情報交換など、話は尽きない。とても勉強になる。
-
惜しみつつ散会。芝生で並べられるのは、みな参加車の状態がいい証だ。
-
オーナーはおおらかな方が多く、そう方との交流で愛車が益々好きになる。