グループBを戦うはずだった幻のフェラーリ、288GTO
公開 : 2017.04.23 00:00 更新 : 2017.05.29 18:52
絶妙なステアリング・フィール
だが、ステアリングは絶品だ。フィードバックがしっかりとあり、完璧な重さで、ギア・レシオも絶妙だ。くしゃみをしたら茂みに突っ込みそうなほどシャープではないが、見事に正確だ。そのため、車幅が広く、ノーズの沈み込みがわかりにくいにもかかわらず、コーナーにさしかかると、操舵力が重くなるが、掌がまるでターマックをなでてグリップを探しているかのように、その重さがかえってクルマに対する信頼を強めてくれる。ミルブルック・テストコースの有名なヒル・ルートはミニチュア版のアルプスの峠道のようだ。物理的にも似ているし、頻繁なブレーキングが必要な峠道に入る前に、もう少しストレートを走ってクルマの性能を確かめたいと思っているときにも、ドライバーの気持ちを捉える点も良く似ている。
ブレーキング中に路面のうねりにあうと、大きく蛇行する傾向があるので、ブレーキを掛けるときには注意した方が良い。しかし、ブレーキの利きは恐ろしく良い。しかも冷えていても良く利く。現在のスーパーカーのように、セラミック・コンポジット素材のローターが温まるまでは鈍いなんてことはない。このクルマのディスクは、冷却のためのベンチレーションを設けた単なる金属板だ。そのため最初の食いつきが良く、ペダルの感触も最高だ。
GTOのネーミングの復活に恥じないモデル
30周年を迎える288GTOが、今でもこれほど素晴らしいのは、開発当時ずば抜けたクルマだった何よりの証拠だ。フェラーリの歴史にとって重要な要素をすべて併せ持ち、その上にレアなのだから、良好なコンディションの288GTOを手に入れるのに£100万(1億6000万円)近くの投資が必要だと聞かされても意外でもなんでもない
1984年には、テスタロッサとGTOというフェラーリでも最も尊敬された2つのモデル名が復活した。前者は、旧モデルとは似ても似つかないクルマの代名詞になってしまったが、後者はまさに288に相応しい名称だ。また、これに勝る賞賛の言葉はないだろう。