「ディーゼル衰勢」は正しい? 0-160km/h=10秒切りをパナメーラで試す
公開 : 2017.04.22 15:00 更新 : 2017.07.04 14:41
パナメーラ・ディーゼルに代わる意外な2台
これに代われるかもしれない候補といえば、1991年頃に乗ったBMW 325td以外には思いつかない。
今でも鮮明に思い出すのは、テディントンにあったAUTOCARの旧オフィスを出て1km足らずを走ってから、リアエンドのエンブレムを確かめたときの光景だ。
スムーズさと静かさが、ディーゼル車のものだとはしばし信じられなかった。しかも当時のディーゼル車の水準に照らせば、実に速いクルマだったのである。
その後、フォルクスワーゲン・トゥアレグV10 TDIなどは好きになれた。牽引に使っても、ディーゼルとは気付かず、ほかのいかなる欧州車とも変わらず使えた、初めてのクルマだったからだ。とはいえ、なにぶんにも高価なモデルだ。開発費も十分に掛けられたであろうことを考えれば、驚くに値しない結果だといえる。
現在、季節や使用条件などを問わない現実的なディーゼルの雄を挙げるなら、BMW 320dということになる。排気量は2.0ℓと控えめだが、20年ほど前の330dと比べても、パワーでも加速でも、最高速でさえも上回っている。
その上、23.8km/ℓという燃費は、1.0ℓのベーシックな仕様で、パワーは1/3しかないフォルクスワーゲンUp!より優れているのだ。また、ガソリン車並みのスムーズさや洗練度を求めるとしても、今回のパナメーラのような6気筒を選ばずとも、アウディA4の2.0ℓディーゼルがある。これはとんでもなく静かで、リラックスした回り方をする。
過去30年間で、ディーゼル・エンジンはトラックやタクシーだけのものではなくなり、使い勝手のいいエンジン特性や長い航続距離、優れた燃費を求める一般ユーザーにも応えうるものへと進歩を遂げてきた。
また、ディーゼルを規制しようという勢力は都合よく記憶から消し去っているようだが、ガソリン車よりCO2排出量を15%削減できることも無視できない。気候変動はもはや問題ではない、などという意見はナンセンスだ。
最後に、ディーター・ツェッチェの言葉を紹介しよう。彼は、いうまでもなくメルセデス・ベンツのCEOで、そのセールスでBMWやアウディを抜き去り、世界一のプレミアム・ブランドの座を奪回した人物でもある。言い換えるなら、愚かな人物ではないということだ。
昨今のディーゼルを脅かす議論について意見を求めたときのことだ。彼の回答は明確だった。
「多分に感情的、政治的、かつ筋道の通らない議論です。事実と技術的なポテンシャルに鑑みれば、ディーゼルのもたらす可能性を放棄するのは、愚かという以外の何ものでもありません」
パナメーラの、1秒当たり16km/h以上という加速を目の当たりにすると、これに同意せざるを得ない気分になってくる。