価格急騰 1960年代で最も完成度の高い2シーター・フェラーリ、365GTCに乗ってみた

公開 : 2017.05.05 00:00  更新 : 2017.05.29 18:52

良質な乗り心地

ブレーキは160km/h超からでも確実にスピードを殺してくれると共に、フェード現象が起きる気配もない。コニ製ショック・アブソーバーのおかげで乗り心地はしっかりしていながらも衝撃をうまく吸収している。275GTBから継承したオールラウンドのダブル・ウィッシュボーン独立懸架サスペンションが対応し切れなかった衝撃については、スプリングのきいたシートがそれを吸収してくれる。

そのような劇的な性能から予想されるように、高度の高い山岳路のタイトなコーナーを抜ける際もロールをほとんど感じさせない。

理想的な重量バランス

ホイールベースの短い365GTCは、ガソリンを満タンにした状態で50:50という理想的な前後重量配分のおかげもあってか、アンダーステアにセッティングされていたそれ以前のGTとは異なり、魅惑的なまでにニュートラルな感じだ。かつて、ポール・フレールは、365GTCが、限界点でも完璧なバランスを保ち、そこで「コントロール可能な形でスムーズにドリフトし始める」とレポートしている。

このクルマの目の玉の飛び出る値段を考え、そのようなコーナリング性能の限界を試すことは自制したものの、V12を轟かせながら高めのギアで高速コーナーを抜ける際のレスポンスはすばらしく、やみつきになりそうだった。

エンジンは巨大なトルクと柔軟性を備えているが、本領を発揮するのは高回転域だ。0-100km/h加速がわずか6.3秒という365GTCは、どんな基準をしても充分に速いクルマだが、1451kgという重量を前にすると、この数字がますます印象的なものとなる。

魚を連想させるフロントエンドよりも粋なリアの方がしっくりくるものの、細部に至るまで均整のとれた外見。

4.4ℓV12ならではの強烈なパワー

ターマック舗装の滑らかな40号線は、まるで365GTCのために存在するようだった。どのギアでも、洗練され、余裕のあるパワーが回転数をすばやく引き上げ、無限に加速し続けるようにさえ感じられる。

ある長い直線区間で190km/hを保って走ってみたが、この強大なマシンは、1969年当時にAUTOCAR誌で計測した242km/h(6600rpm)まで楽々と加速していきそうだった。長い走行距離をこなすのは非常に容易であり、そのことは365GTCが長距離をリラックスして走れるグランツーリスモであることを証明している。ただし、90ℓ入りの燃料タンクに絶えずガソリンが補給され続ける限りはではあるが……。

旅の最後の方になって、V12の伝える強烈なパワーを楽しむ代わりに、燃料計とにらめっこする羽目になったのは非常にストレスになった。

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