価格急騰 1960年代で最も完成度の高い2シーター・フェラーリ、365GTCに乗ってみた

公開 : 2017.05.05 00:00  更新 : 2017.05.29 18:52

いささか価格は急騰してしまったが

今回、筆者の特別な旅が実現したのは、パトリシオ・マグラネ氏の好意によるものだ。彼は、2007年にロンドンのカーズ・インターナショナルからこのメタリック・クリア・ブルー(Blu Chiaro Metallizzato──クルマの色はいつだってイタリア語の方がエキゾチックに聞こえる)の365GTCを買い、フェラーリの世界を知った。

365GTCは、2007年5月にモデナで行われたRMのフェラーリ・レジェンダエパッシオーネでオークションにかけられ、16万5000ポンド(およそ2,100万円)で落札されている。過去7年間で価格がさらに高騰しているものの、だからと言ってマグラネ氏がフェラーリを運転するのを控えることはない。

330/365GTCの価格が高騰しているためにこのスタイリッシュなクーペのオーナーたちが自分のクルマに乗るのを控えているとすればお気の毒な話だ。ガレージ・フランコルシャンのサービス・マネージャーがオーナーたちに常々説いてきたことだが、「クルマというものは、定期的に動かした方がはるかに信頼性が高まるし、その見返りもあります」 ということだ。

コロンボの設計したV12エンジンは高回転域で伸びる。


値段が急騰していることも、アルゼンチンのカントリー・ロードでの走行体験をますます得難いものにしている。AUTOCARは当時365GTCの本格的な試乗レポートを初めて行うため、説得に説得を重ねた末にコースリにあるロブ・ウォーカーのガレージから365GTCを貸してもらう約束を取り付けた。

その時のレポートも同意見だった。「普通の家が1軒買えてしまう値段。それに、800マイル走るごとにグリーン・シールド・スタンプ帳が切手でいっぱいになる燃料消費量。このクルマは恵まれた人々のためにある」レポートはそう締めくくっている。

「しかし、365GTCは、そうした人々の基準でも、ドライバー、パッセンジャー、傍観者、企業の経営者、そして何よりもスペシャリスト達に感動を与え続けるに違いない」

決して忘れることのない貴重な体験

365GTCはやはり超高級車だった。しかし、このセンセーショナルなフェラーリ本来の姿をなお失わずに済んでいるのは、マグラネ氏をはじめとするエンスージァストの努力の賜だ。

この幻想的な40号線を365GTCで疾走した記憶が失われることは決してない。偉大なクルマを、自分にとって真に特別な存在にしてくれたのは、そのクルマで走った場所の記憶だ。4.4ℓV12エンジンのフェラーリ独特のエンジン音を響かせ、アンデスの山影に沿って疾走したのは夢のような体験だった。

その夜、365GTCでのアンデス走行を記念して飲んだアルゼンチン産のマルベックの味は格別だったことは言うまでもない。


フェラーリ365GTC

生産期間 1968〜1970年
生産台数 168台
車体構造 チューブラー・スティール・フレーム/スティール・ボディ
エンジン形式 V12 SOHC4390cc + 3ツイン・チョーク・ウェーバー40DFIキャブレター
エンジン配置 フロント縦置き
駆動方式 後輪駆動
最高出力 324ps/6600rpm
トランスミッション 5段M/T
全長 4496mm
全幅 1676mm
全高 1283mm
ホイールベース 2400mm
車両重量 1451kg
サスペンション (前後)ダブル・ウィッシュボーン + コイル 
ステアリング ZFウォーム&ローラー
ブレーキ ディスク
0-97km 6.3秒
最高速度 242km/h
現在中古車価格 1億1000〜1億2500万円

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