★★★★★獲得 マクラーレン720S最速試乗 「世界最高」の称号を
公開 : 2017.05.04 12:20 更新 : 2017.05.29 19:10
スーパーカー=じゃじゃ馬は、過去のもの?
エンジンとトランスミッションも3モード式で、サスペンションとは別個に切り替えできる。
試乗車にはスポーツ・エキゾーストやバケットシートを備えるレーシーな仕様だったが、市街地でのエンジン音はそれほど大きくなかった。
いや、市街地に限らず、力強いサウンドではあるものの、AMGのV8のような轟音や、フェラーリのような吹け上がりといった、これ見よがしな演出はない。
また、運転していると、すぐにクルマが小さく感じられるようになる。そのため、これが本当に700psオーバーのスーパースポーツなのかと、馬鹿げた疑問さえ抱いてしまう。
£218,000(3,165万円)もするクルマなのだが、クルマの流れを縫って走り、荒れた田舎道やなだらかなアップダウンを駆け抜けてみると、ミドルサイズのファミリー・セダンに乗っているように運転がイージーであることに気付くはずだ。
とはいえ、望めばとびきりの速さも見せてくれる。トルクは太く、ラグはきわめて小さいため、高いギヤでも走りやすい。中回転域でも、3台くらいは楽にオーバーテークできる。
ロック・トゥ・ロック2.5回転のステアリングはピュアでありながらしっとりと滑らかで、ギヤ比も重さも素晴らしい。コーナリング中にもウエイトが抜けるようなことはなく、路面の感触も損なわずに伝えてくれる。このクラスでは希有なフィーリングだ。
フェラーリ488GTBを上回るパワーの持ち主だが、それより神経質さはない。かつて、900psオーバーのP1がいかにサーキットでドライブしやすかったかを告げたとき、マクラーレンのスタッフが話していたことを思い出した。
「そうでしょう。フル・スロットルにする必要はありませんから」。あえて挑まなければ、自然とそうなるのだ。われわれもそうだった。それを知らしめるべく、マクラーレンはヴァレルンガ・サーキットを試乗会場に選んだのだ。
どれほどパワーがあれば、手に負えなくなるのか。そんな疑問は、このレベルのクルマにとっては愚問だ。
15年前ならありえなかったようなパワーも、シャシーにそれを受け止める能力があれば、フルスロットルさえ可能なのである。ピットアウトの際、4速でトップエンドまで回してそれを思い知った。