ロータス・ヨーロッパではない「47」 正真正銘のレーシング・モデル
公開 : 2017.05.13 00:00 更新 : 2017.05.29 19:24
信じがたいほどシャープで速い
そんな冒険をせずとも、47の走りは泣きたくなるほど速く、信じがたいほどシャープだ。26Rよりも純粋なレーシングカーに思えるし、剛性は高く、しなりも少ない。おそらくは誤った感覚だろうが、安定感も高い気がする。このクルマの正体をシート・パッドの厚みだけで判断するのはナンセンスだ。
しかし、47の素晴らしさはむしろその細部にある。完全にオリジナルとはいえ、使い込まれた中古車なりにキャビンは軋むが、レスポンスの正確さはとてもただのクルマとは思えない。スロットルは驚異的に鋭く、5.25M-13の前輪から伝わるステアリング・フィールは期待をはるかに上回るほどダイレクトだ。
段差ではハンドルがとられ、癇癪を起こした赤ん坊のように跳ねるものの、車高が極めて低いため、道路とほとんど一体化したような気分だ。ブレーキ・ペダルを強く踏み込んだ場合も同様。
標準仕様のブレーキはオーバーヒートの懸念があったが、オールラウンド・ディスクと特製キャリパーの47では、靴の踵をアスファルトにめり込ませるような感覚を味わえる。また、ヒューランド製トランスミッションは、クロス・レシオのギアを適切に選べば素晴らしく従順なものの、不注意に操作すると言うことを聞かない。
惚れ惚れするようなフィードバック
惚れぼれするようなフィードバック、それが47である。走っていると、まるでクルマの一部になったみたいだ。エンジン・ノイズは騒々しいが、甘美でもある。ただし、トランスミッションは耳障りだ。
走りに100%集中していないと、つまり停車中は、細部がいろいろと気になるが、全体のバランスは驚くほど取れている。47のコクピットに入りオリジナルのハーネスを締め上げると、広いキャビン(グローブ・ボックスまである)には180mphスケールの速度計とレッド・ゾーンのない1万rpmまで刻まれた回転計が目に入る。
つや消しアルミのダッシュボードに灰皿を見つけると、本当はロードカーではないかと思えてくる。しかし、そんなことはない。固定式のシートに沈み込み、上向きに視線を投げ、リムの細い見事なステアリングと背の高いシフト・レバーで戯れれば、自ずと気づくだろう。
燃料計はないし、運転席の窓には丸穴が空いているし、それにあちこち47Fとスタンプされたダイモ・テープがラベリングされている。
ロードカーの仮面をかぶったレーシングカー
こうした外観上の特徴に加え、脚まわりにはブレーキ・バランス・バーが搭載されているし、ピロ・ボールも見えるうえに、タイヤの脱着時にはリア・サスペンションのトップ・リンクを外さなければならない。
シャシーは切り詰められ、リアのクレードル部も異なっている。これを知れば、偉大なジョン・マイルズがシェブロンB8の登場まで、47でグループ4を席巻したのも頷ける。そう、当時の金額で2,600ポンドのキットカーが、本格的レーシングカーを圧倒し、時には屈辱を味合わせたという。
しかもそれがレーシングカーではなく、公道でも走れる点が見事だ。ただ、誤解しないで欲しいが、このクルマは決してホモロゲーション用のスペシャル・モデルではなく、ロードカーの仮面をかぶった純粋なレーシングカーだということ。F1ではなく、マクラーレンM6のようなものだ。
それでピンと来なければ、47で走ってみればいい。とにかくエンジンを始動すれば分かるはずだ。