フォードGT、先代GTよりも初代GT40に近い? フォード最強のロードカーを試乗
公開 : 2017.05.15 19:00 更新 : 2017.05.29 18:53
2017年版の「フォードGT」、ご存知ですか? サーキットで、公道で、徹底的に試しました。なかには意外な発見も! 5ページの試乗記をじっくりとご覧ください。
■どんなクルマ?
精鋭が非公式に継続した「ル・マン参戦プロジェクト」
新型フォードGTは、マスタングになるはずだったクルマだ。いや、正確に言えば、フォードがGT40の初勝利から50年目となる2016年のル・マンで、クラス優勝を勝ち取るべく投入する予定だったマスタングに代わるクルマである。
そのマスタングはローンレンジャーの愛馬にちなみ、「プロジェクト・シルバー」と呼ばれた。
問題は、シルバーが大きな馬だったように、マスタングが大きなクルマだったことだ。特にフロント・セクションの大きさは、エアロダイナミクス的には好ましくなく、それはつまり、速く走るのにも向いていないということになる。
フォードはマスタングをGTレーサーに生まれ変わらせるべく多くのモディファイを施したが、その成果は芳しくなく、計画の中止が決定する。
しかし、ル・マン参戦プロジェクトは非公式に継続された。20人に満たない精鋭たちが、暗証キーつきのデザイン・スタジオで極秘裏に進めたそこからは、マスタングではなく、GT40インスパイアのまったく新しいマシンが生まれることとなったのである。
それは、レースに出ることを目的に開発されたという点において、先代のGTよりも、初代のGT40に近いものだ。
そして、トップ・カテゴリーのLMPプロトタイプ以外は、参戦のためにホモロゲーション用の市販車が必要で、それを満たすのが、新型GTのレゾン・デートルなのである。
この市販車ベースのマシンで競われるGTEクラスは、ポルシェやアストン マーティン、フェラーリ、そしてコルベットが凌ぎを削る。
新型GTはそれらのどれとも、もちろんマスタングとも似たところのないクルマだ。4779mmと長く、1063mm(あるいは41.8インチ)と低く、ボディだけで2003mm、ミラー込みでは2238mmと幅広い。
キャビンはケータハムかというほどタイトだ。アストンやフェラーリであれば、同乗者と肘が触れあうようなキャビンなど、市販版の顧客が納得しないだろう。このGTが、そもそもロードカーとして計画されたものではないことは、この点にも見て取れる。
キャビン部分は軽く剛性の高いカーボンのタブで、ロールケージが組み込まれている。これも、通常のロードゴーイングカーには見られない要素だ。その後方には、3.5ℓV6ツイン・ターボを積み、ゲトラグ製7速DCTを介して後輪を駆動する。
ただし、レース仕様のトランスミッションはシーケンシャル・ギアボックスが採用される。
これはもちろん、開発コストの削減を目的としているわけだが、レースが血統を磨くという昔ながらの考えが真理であることを、この「GT41.8」も証明することだろう。