フォードGT、先代GTよりも初代GT40に近い? フォード最強のロードカーを試乗
公開 : 2017.05.15 19:00 更新 : 2017.05.29 18:53
フェラーリ458スペチアーレやマクラーレン675LTを目指した
2点間の移動が速いのは疑うべくもないが、敏捷で挙動が予測しやすく、レスポンスにも優れるため、ただ速いという以上の満足が得られる。ややしわがれ気味の、洗練性に欠けるエンジン音さえ好きになれる。アストンやAMGならば、この手のノイズは開発段階で消されているだろうという類のものであるにもかかわらず、である。
しかし、それこそ偽りのないエンジン音なのだ。また、大出力ターボながらラグは最小限。スポーツ・モードにすれば、アンチ・ラグ・システムが極めて効果的に働いてくれる。
5500〜7000rpmでの飛び出すような加速は、0-97km/hが3秒以下というスペックを痛感させ、その先348km/hまで伸びるというトップスピードにも確信が持てるものだ。
ただし、驚異的なメカニカル・グリップ限界の高さやほぼ発生しないロール、ややオーバーサーボ気味のブレーキなどを感じさせた今回の試乗車は、アストン マーティンV12ヴァンテージSやポルシェ911 GT3ほどコミュニケーションに富んだロードカーではなかった。もっとも、その差はわずかだが。
このクルマのベスト・パフォーマンスは、車高を落とし、スプリング・レートを上げた状態で、サーキットを走ったときにこそ発揮される。メカニカル・レイアウトの全ては、そこでこそ真の意味を知らしめるのだ。
車高やスプリング・レートが変わっても、縁石まで使って攻めるときでさえ十分にソフトで、ダンピングは並外れて利く。
コーナーをいくつか抜けただけで、これが十分な安心感と柔軟性を備えたスーパーカーであることがわかる。ストレートで656psを全開にして、コーナー手前でカーボン・セラミック・ブレーキを思い切り利かせるような走りを楽しめるはずだ。
わずかながらアンダーステア気味だが、抑えるのは容易で、コーナーではオーバーステアに持ち込める。しかし、この新型GTを存分に楽しみたいなら、適切なドライビングを心がけるのが一番だ。
ブレーキを残しつつコーナーに進入し、エイペックスを過ぎたらパワーオン。そう、レーシング・ドライバーのような走りこそ、このクルマにはふさわしい。
当初、フォードが目指したのは、フェラーリ458スペチアーレやマクラーレン675LTだったという。そこでそれらを手に入れて検証し、GTがどうあるべきかを改めて決めた。
開発に携わったエンジニアによれば、テストを行った全てのサーキットで、GTはそれらベンチマークとしたモデルを上回る速さを見せたというが、それは信じるに足る話だ。
ただし、楽しさという点はまた別の話で、それはそれでいいのだと思う。675LTはレーシングカーではなく、公道上で夢中になれる走りを追求したクルマだ。
対してこのGTは、レース活動上の必要に迫られて、公道仕様を造らざるを得なかったクルマなのである。そうでありながら、ここまでのクルマができあがったというのは、またすごいことではある。