アウディS5は「能ある鷹」 A4、S4、A5と異なるアプローチ RS5との関係性は?
公開 : 2017.05.29 19:10 更新 : 2017.05.29 20:19
懐の深まった走り
ワインディングでペースを上げていった場合のS5はしかし、性格が一気に豹変してしまうわけではなかった。
しっとりと上質な雰囲気を保ったまま、レヴ・カウンターの針だけが6500rpm付近のリミット付近に積極的に留まって仕事をこなす感じなのである。
「アウディ・ドライブ・セレクト」でコンフォートからダイナミック・モードへと切り替えても、急にアシがカタくなるということもない。
シャシー本来のしなやかさはそのままに、微かにロール剛性だけが上げり、4輪で踏ん張るクワトロのフィーリングだけを生々しく伝えてくれる。
コーナーへの進入で減速を終えた後、かなり早くからスロットルを開けていけるのはアウディのスポーツ・モデルの特徴で、少々アンダーステアに感じていてもスロットル一定で待つことで電制のセンター・デフがオンザレールに復帰させてくれる。
試乗車にはオプションのリア・スポーツ・ディファレンシャルが組み込まれていたのだが、このギミックも違和感のほとんどないベクタリング効果によって旋回を助けてくれていた。
新型S5クーペの速さは相当なものだが、しかし本当に凄いのは高性能をひけらかさない懐の深さにある。先代は速そうな雰囲気に満ち溢れていたが、実際に峠を走るとわりと早くにフロントタイヤが音をあげ、下りはクーリングに徹するといった感じだった。
その点恐ろしく前後長の短い3.0ℓV6を搭載した新型S5クーペはハンドリングにも軽快感が漲っており、しばらくワインディングを飛ばしていても安定感は揺るがなかった。