最強セダン一番勝負:後編 ― AMG E63 vs アウディRS7 vs レクサスGS F vs BMW M6グランクーペ
公開 : 2017.05.29 11:40 更新 : 2017.05.29 19:23
E63 Sに感じる、明らかな不満
4WDシステムは、コンフォートとスポーツの両モードでは、スタビリティを大幅に高める。スポーツ+とレースにモードを変えると、公道を走るような速度域では、ハンドリングをよりニュートラルでアジャストしやすくしてくれるが、ドライブトレインは魅力的だがときどき出しゃばるところもある。
問題は、走行モードをハードにすればするほど、乗り心地もハードになるということで、これには気乗りしないだろう。得るものもあるが、妥協するだけの価値は見出せない。
もちろん、ドリフト・モードも用意され、E63 Sは素晴らしいドリフトを披露してくれる。しかし、AMGは後輪駆動状態となるそれをあまり使ってほしくないようで、このモードを呼び出す儀式は、TVゲームの裏技を出すコマンドのように複雑だ。
まずはレース・モードとギアボックスのマニュアル・モードを選択し、ボタン長押しでESPを完全にカット。それから左右のパドルをダウン側でホールドし、そのあとで右のパドルだけを動かし、選択の意志を明確に表明するのである。こんなめんどくさいことを、しょっちゅうやる気が起きるだろうか。
結局、トラクションとスタビリティ優先の走りも、サーキット限定の手に汗握るようなテール・スライドも味わえるが、その中間にあたる、現実的な後輪駆動のハンドリングを楽しめる領域は存在しない。
£90,000(1,285万円)もするスーパー・サルーンが、これでいいとは思えない。