7台のアバルトに乗る
公開 : 2017.06.04 11:40 更新 : 2017.06.04 12:35
600ベースの最終モデル、1000ベルリーナ・コルサ
フィアットが600を14年間にわたって作り続けた間に、アバルトはそれをベースに16車種を世に送り出した。その最終モデルが、113psを誇るグループ5ツーリングカーの1000ベルリーナ・コルサだ。最初の量産600がたった22psの実用車だったことを思うと、なんと遥かな道程だろうか。
エンジン・カバーを開けたままにするのは、アバルトならではのスタイル。
進化の過程で、アバルト850 TC(TC=ツーリズモ・コンペティツィオーネ)が61年のニュルブルクリンク500kmで1~3位を独占。しかし64年の欧州のツーリングカー選手権でサーブ96に負けると、カルロ・アバルトはロードカー市場の主力をOTシリーズに移しつつ、レースでの捲土重来を期すことになる。
トリムを剥ぎ取ったインテリア。
ホモロゲーションに間に合わせるために、改造パーツを急ピッチで製作。短期集中的に開発を進めるなかで、アバルトはモータースポーツの「青天井の世界」に足を踏み入れた。こうして生まれた1000ベルリーナ・コルサは、もはやフィアットとの共通部品は僅かだ。ブレーキ、ハブ、トランスミッション、オイル・クーラーは専用だし、メーターやステアリング・ホイール、シフト・ノブは自社のコルソ・マルケ工場の内製品を使っている。「アバルトのアイコンとして見なされているクルマだ」とキャッスルミラーは断言する。「ワイド・ホイールとワイド・フェンダー、フロントに積む大きなラジエーター、ステーで支えて開いたままにしたエンジン・リッド、そこに覗くツイン・キャブのエンジン。このエンジンがクルマのすべてを支配している」
レースの血統を持つパワープラント。
イグニッションをオンにするやいなや、キャビンはノイズに包まれる。スロットルをブリッピングすると、クルマ全体が脈打つような感覚だ。1速を選んで100psエンジンを解き放てば、ライフル銃を連射するかのごとき勢いでシフト・アップを繰り返さねばならない。ハンドリングは目を見張るほどで、サウンドは壮大。そして4輪ディスクのブレーキが一瞬のうちにクルマを止めてくれる。ただし「最善か無か」というエンジン特性ゆえに、コーナリングにはコツが必要だ。キャッスルミラーがこう語る。「コーナーに入るとき、アクセルを離すのも緩めるのも禁物。正しい侵入速度にした上で、トラクションの良さを活かしてアクセル・オンのままコーナリングしたほうがよい」
大型のエアインテーク。
ベルリーナ・コルサの運転体験を語ろうとするなら、自分に正直にならなくてはいけない。なにしろこれは最もピュアで、最もワイルドなアバルトだ。運転するのはラクではないが、同時に激しく心を惹かれるクルマなのである。
アバルト1000ベルリーナ・コルサ
生産期間 | 1964〜1970年 |
生産台数 | N/A |
エンジン形式 | 鋳鉄ブロック・アロイヘッド空冷OHV982cc |
エンジン配置 | リア縦置き |
駆動方式 | 後輪駆動 |
最高出力 | 113.6ps/4900rpm |
最大トルク | 9.0kg-m/3500rpm |
変速機 | 5段M/T |
サスペンション | 4輪トレーリングアーム |
ステアリング | ウオーム&セクター |
ブレーキ | ディスク |
車両重量 | 583kg |
0-97km/h | N/A |
最高速度 | 200km/h |
現在中古車価格 | 880万円から |