7台のアバルトに乗る
公開 : 2017.06.04 11:40 更新 : 2017.06.04 12:35
アバルト最後のマシン? OT1000
フィアット850のセダンをベースに開発したOT850は、600派生のクルマたちよりボディが重い上に、エンジンは僅か2psアップというライト・チューン。最高速度も10km/h速いだけとあって人気が出ず、1年で打ち切られた。しかし一方でプロダクションカー・レースにも着目していたカルロ・アバルトは、65年にフィアットが850クーペ/スパイダーが発表すると、これがOT(オモロガート・ツーリズモ)を継続させるチャンスになると考えた。OTシリーズのエンジンは軽いチューンの843ccに始まり、ストロークを延ばした1ℓ、さらにパワフルな1.3ℓや1.6ℓへと発展。2ℓ版も開発され、テストではなんと204psを記録したという。
フィアット850のボディから不要なものを剥ぎ取り、原点に立ち返ったスタイル。
これからのエンジンを使って、アバルトは850クーペのホット・バージョンを数多く生み出す。OT、OTS(68ps)、OTR(半球形燃焼室に放射状にバルブを配置した74ps)、そしてOTSS(OTSのレースカー)などだ。今回の取材車はOT1000である。595SSや750 GT ザガートから乗り換えると、これはずっと大人びたクルマに思える。室内が広く、着座位置が高いので視界も良好だ。外観はストックの850クーペとほぼ同じ。クリーンで個性的なデザインは、フロント・グリルがない顔を見ればすぐにそれとわかる。カンパニョーロのホイールとアバルト好みのチェッカー柄のルーフが、ベース車との識別点である。
比較的スペースの広いインテリア。
エンジンは850のブロックを使いながらも、ストロークの長いクランクシャフトで982ccに拡大して62.8ps。スロットルを踏み込めば、美しいサウンドを奏でる。エキゾーストが低音を響かせる一方、ウェーバーのDISキャブレターの吸気音も心地よい。ギアボックスのメカニカルなタッチも良好で、途切れのないシフトを約束してくれる。スペックシートによれば、最高速度は155km/hに達するとのことだ。
982ccの4気筒は62.9psを発揮
当時のアバルトは排気量や馬力、トルク、重量、最高速度といった目立つ数字に事欠かず、それがクルマの売りだった。それゆえどのアバルトも進化を続けたわけだが、OTも例外ではない。シリーズはやがて2ℓ/185psを積んで240km/hを実現したOT2000クーペへ、あるいはフィアット124の1.3ℓを採用したOT1300へと発展。これらがフィアットのバッジで売るアバルト製コンプリート・カーの最後のモデルとなった。
ルーフの赤いチェッカー柄にはサソリのマークが埋め込まれている。
カルロは再びエンジン開発とカスタムカーに集中しようとしていたが、財政事情がそれを許さず、1971年、アバルトはトリノの巨人に取り込まれることになったのである。
アバルトOT1000
生産期間 | 1964〜1971年 |
生産台数 | N/A |
エンジン形式 | 鋳鉄ブロック・アロイヘッド空冷OHV982cc |
エンジン配置 | リア縦置き |
駆動方式 | 後輪駆動 |
最高出力 | 62.9ps/6150rpm |
最大トルク | 8.8kg-m/3500rpm |
変速機 | 5段M/T |
サスペンション | 4輪トレーリングアーム |
ステアリング | ウオーム&セクター |
ブレーキ | ディスク/ドラム |
車両重量 | 726kg |
0-97km/h | N/A |
最高速度 | 155km/h |
現在中古車価格 | 320万円から |