7台のアバルトに乗る
公開 : 2017.06.04 11:40 更新 : 2017.06.04 12:35
フィアット傘下初の124アバルト・ストラダーレ
フィアット傘下に入ったアバルトはただちに124アバルト・ラリーの開発に着手し、72年10月、合併後の最初の成果として発表。それは同時に、フィアットが全力を挙げて世界ラリー選手権を勝ちにいくことを予告するクルマだった。公道用のストラダーレとフルラリー仕様のコルサを合わせて、生産台数は1,013台にとどまる。
アバルトの手にかかると、124スパイダーもアグレッシブな姿に変身する。
第一印象では量産の124スパイダーよりずっと小さく感じるが、ボディの寸法に変更はない。前後のクローム・バンパーを取り去り、代わりにラバー製のオーバーライダーを装着。これによって、トム・チャーダがデザインしたベース・ボディの美しさが引き立ち、そのプロポーションの完璧さがより強調されて見える。
インテリアに安楽さをもたらすものは何もない。
インテリアではセンターコンソールやリア・シートが取り払われ、ダッシュボードのウッドはアルミに張り替えられている。遮音材の類も一切ない。ソフトトップに代えてグラスファイバー製のハードトップを装備。ワイドな樹脂製リア・ウインドウのおかげで、後方視界は良好だ。ドアのスキン、サイドシル、リア・クォーター・パネルはアルミ製、ボンネットとトランク・リッドはグラスファイバー製とし、さらにマグネシウム・ホイールの採用もあって、ベース車から200kgも軽量化している。
オール・アルミの4気筒。
ツインカムのエンジンはほぼノーマルに近い。組み立て精度を高めると共に、改良型マニフォールドにウェーバー製44IDFのツイン・キャブレターをボルトオンした程度だが、10psアップして128ps。ただしアバルト・コルセのレーシングキットを組み込めば、170psにまで引き上げることができる。パワーの出方はスムーズだ。回転にが上がるつれて活発になり、各ギヤでレッド・ゾーンまで駆け上がる。ちなみにベース・エンジンを設計したのは、元フェラーリのアウレリオ・ランプレディ。45年間にわたってさまざまなバリエーションが生産され、フィアット・グループの数多くのモデルに搭載された。
ダッシュボードのウッドはアルミに張り替えられている。
ボディ・シェルにはスポット溶接よりもシーム溶接を多用し、ロールバーの追加とあいまって剛性を高めている。独立式のリヤ・サスペンション(マクファーソン・ストラットの一種)のおかげで、ハンドリングは見事だ。自信を持ってコーナーに飛び込んで行ける。ベース車よりバネ下重量が減ったおかげでトラクションも向上。しかしハードにコーナリングすると後輪がリフトしがちになり、限界付近で姿勢を乱す兆候が出るのも確かだ。
124アバルトのワークスカーは世界ラリー選手権で3勝したが、メイクス・タイトル争いでは常に2位。73年はアルピーヌ・ルノーのA110に、74~75年はランチア・ストラトスに総合優勝を奪われた。そして76年のWRCは131アバルトの出番となったのである。
124アバルト・ストラダーレ
生産期間 | 1972〜1976年 |
生産台数 | 1013台 |
エンジン形式 | オールアロイ 水冷DOHC1756cc |
エンジン配置 | フロント縦置き |
駆動方式 | 後輪駆動 |
最高出力 | 130ps/6200rpm |
最大トルク | 16.2kg-m/3500rpm |
変速機 | 5段M/T |
サスペンション | マクファーソン・ストラット |
ステアリング | ウォーム&ローラー |
ブレーキ | ディスク |
車両重量 | 938kg |
0-97km/h | 8.3秒 |
最高速度 | 192km/h |
現在中古車価格 | 624万円から |