7台のアバルトに乗る
公開 : 2017.06.04 11:40 更新 : 2017.06.04 12:35
WRCで活躍した131アバルト・ストラダーレ
69年にランチアを買収していたフィアットは、ストラトスをWRCから引きずり下ろすことを決断する。誰の目にも疑いなく魅力的なストラトスだが、高価なエキゾチックカーであり、他の惑星からやって来たかのようにさえ見える。大衆向けのクルマをベースとしたラリーカーでWRCに勝つことこそが、フィアットの念願だった。
131アバルトはラリーの成功をフィアットにもたらした。
アバルトのコルソ・マルケ工場は、進めていた2ℓのX1/9プロトティーポの企画を脇に追いやり、トラディショナルなFRレイアウトの131の開発に集中。生産はカロッツェリア・ベルトーネで始まり、1年をかけて406台を送り出した。ちなみに完成車の価格はベースの131の3倍もしたという。
2ドアのボディはベルトーネのグルリアスコ工場で改造され、塗装され、内装が施された。車重は980kgにまでダイエットしている。路上に佇む131アバルトは、いかにも荒々しい。124スパイダーが旧き佳き時代を思い出させるデザインだとすれば、131のシルエットはまさに70年代的だ。大きく張り出したホイールアーチ、さまざまなエア・インテークやスクープ、スポイラーが風を切って走る力強さを醸し出す。
インテリアは比較的落ち着いた雰囲気。
加速時にお尻が下がるスタンスも70年代を彷彿とさせるもの。2ℓのエンジンは124にあったDOHC 16バルブの進化型だが、奇妙なことにアバルトはあえてウェーバー製34ADFのシングル・キャブレターを選択した。よく回る反面、トルクはあまり力強くはない。それでも140psを発揮し、0-60mph(0-97km/h)加速を8.2秒でカバーする。5速MTのシフトは最高に楽しい経験だ。
124ベースのエンジンにシングルキャブを装着。
サスペンションは124アバルトの4輪独立をベースに開発したものだが、重量配分がずっと良くなったように感じる。「素晴らしいバランスの持ち主だよ」とキャッスルミラー。ハードに攻めても4輪がしっかりと路面を捉え続け、ラック&ピニオンのステアリングはあらゆるニュアンスを伝えてくれる。「パワースライドも、フル・カウンターステアも楽しめる。ドリフトしやすさはフォード・エスコートにも負けない」
ヘッドランプは外側が内側より小さいタイプ。
ラリー用のグループ4マシンは、クーゲルフィッシャー製の燃料噴射を備えて233psにパワーアップ。当初はそのハンドリングの良さを活かしてターマックを得意としたが、後には路面を問わずに活躍した。初年度の76年は欧州選手権のエルバ・ラリーとWRCの1000湖ラリーで優勝。しかしこれは翌年から始まるWRC3連覇の序章にすぎなかった。
131アバルト・ストラダーレ
生産期間 | 1976年 |
生産台数 | 406台 |
エンジン形式 | オールアロイ 水冷DOHC1995cc |
エンジン配置 | フロント縦置き |
駆動方式 | 後輪駆動 |
最高出力 | 140ps/6400rpm |
最大トルク | 18.4kg-m/3800rpm |
変速機 | 5段M/T |
サスペンション | マクファーソンストラット |
ステアリング | ラック&ピニオン |
ブレーキ | ディスク |
車両重量 | 980kg |
0-97km/h | 8.2秒 |
最高速度 | 189km/h |
現在中古車価格 | 640万円から |