7台のアバルトに乗る
公開 : 2017.06.04 11:40 更新 : 2017.06.04 12:35
ゴルフGTIに対抗したリトモ・アバルト130TC
フォルクスワーゲンのゴルフGTIが支配するホットハッチ市場に、フィアットが重い腰を上げて参入したのは81年のことだ。リトモ・アバルト125TCのデビューの場は、あえて選んだフランクフルト・ショー。その過激なキャラクターが熱狂的に歓迎された。
リトモは前身の128のフロアをベースとし、ベルトーネのモダンなデザインを纏ったクルマ。特徴的な樹脂バンパーは、アバルト125TCもそのまま受け継いでいる。ただし、もともと1.1ℓや1.3ℓを積む前提で設計されたボディは、アルジェンタ(132後継のFRセダン)から転用の2ℓが発するパワーに対応するため強化を必要とした。コルソ・マルケのファクトリーはランプレディ設計のこのツインカム・エンジンを、よりスポーティなバルブ・タイミング、新しい排気マニフォールド、オイル・クーラー、アルミ製のオイル・パン、熱負荷に強いゲーツ・タイプのヘッド・ガスケットなどでチューニング。そしてパワープラント全体の向きを90度変えて、リトモのフロントに搭載した。最高出力は126.7psで0-60mph(0-96km/h)は7.9秒であった。
リトモはホットハッチ市場で有力な選択肢になった。
83年に130TCに進化して、ようやく英国でも買えるようになった(リトモの英国名はストラーダ)。ウェーバーのシングルキャブだった125TCに対し、130TCはツイン・キャブ。ウェーバーかソレックスかを選ぶことができたが、どちらも131.8psで、0-60mph(0-97km/h)の加速タイムは125TCより0.2秒速い7.7秒を記録する。
お洒落なレカロ・シート
英国の自動車専門誌は130TCを情熱的に歓迎した。当時のAUTOCAR誌は「これがホットハッチ市場のパフォーマンス・リーダーであることに、今や議論の余地はほとんどない」と記している。ヘッドランプが4灯式になったことを含めて、130TCはストラーダのなかで最もアグレッシブなスタイルの持ち主でもあった。それでも「130TCはもっと評価されてよいクルマだ」とキャッスルミラーは語る。「軽いボディにパワフルでトルキーなエンジンを積み、その魅力をZF製ギアボックスやサスペンションを通じて楽しめるのだからね」
エンジンはフィアット・アルジェンタ用をベースとする。
130TCに乗ってみて、これがなぜ当時の誰もを感銘させたかがすぐにわかった。シートはサポート性に優れたレカロで、整然としたダッシュボートにスポーティなステアリング・ホイールが装着され、インテリアのスペックは充実している。最大トルクは18kgm/3600rpm。スロットル・レスポンスは俊敏で、芳醇なイタリアン・エキゾーストノートと共にコンパクトなボディをグイグイと引っ張る。ハンドリングはシャープだが、たとえ初試乗でさえ、その限界をチェックする自信を持たせてくれる。
130TCになって英国市場にも導入された。
ひとつ難しいことがあるとすれば、この130TCを見付けられるかどうかだ。ノーマルのストラーダの多くがそうであるように、もはや乗って外出しようという人すら少ない。もしも程度の良い130TCを路上で見かけたら、それはもう千載一遇のチャンスなのである。
リトモ・アバルト130TC
生産期間 | 1984〜1987年 |
生産台数 | 585台 |
エンジン形式 | オールアロイ 水冷DOHC1995cc |
エンジン配置 | フロント横置き |
駆動方式 | 前輪駆動 |
最高出力 | 132ps/5900rpm |
最大トルク | 18.0kg-m/3600rpm |
変速機 | 5段M/T |
サスペンション | マクファーソンストラット/トランスバース+ロワ・ウィッシュボーン |
ステアリング | ラック&ピニオン |
ブレーキ | ディスク/ドラム |
車両重量 | 950kg |
0-97km/h | 7.7秒 |
最高速度 | 189km/h |
現在中古車価格 | 56万円から |