スバルの「独自すぎる」ブランド再構築の手法 欧州不振は「織りこみ済み」
公開 : 2017.06.17 19:10 更新 : 2017.12.14 12:31
ケチ、いや堅実でありつづける
スバルの成功は、シンプルなラインナップに負うところが大きい。主力モデルのエンジンはすべてボクサー4で、今やプラットフォームもインプレッサから新たに投入する7座SUVまで同一だ。
スバル初の量産車は軽自動車だが、2007年に14万5000台だったその販売台数は、2016年に3万4000台まで減少した。
低価格で利幅の小さい軽自動車はダイハツのOEMモデルに切り替え、結果として開発・生産コストの負担は軽減している。
このほかに他メーカーと共同開発しているのはBRZのみで、言うまでもなくトヨタ86の兄弟車だが、インプレッサがベースのプラットフォームを用いた後輪駆動車だ。2016年4月時点で、生産台数は22万3000台に達している。
現在、スバルの乗用車は大別して8車種だが、いずれもプラットフォームの基本は共通。その最新バージョンを採用しているのはインプレッサとXVで、近く登場するSUVのアセントもこれを使用する。それ以外のモデルには、今後3年で新開発プラットフォームが導入される予定だ。
スバルとしては、高い安全性能を持つ単一のプラットフォームとトランスミッションを開発し、それを遍く使用する方が好都合だ。しかし、アナリストの論法によれば、電力パワートレインや自動運転にももっと多くの投資をするべきだということになる。
その点、スバルはすでに対応に当たっているが、よりコスト効率に優れた方法を選んだ。既存の4WDドライブトレインをベースに、トランスミッション内にモーターを、リアアクスル上に駆動用バッテリーを配置したハイブリッドシステムを構築したのだ。
これは、スバルのエンジニアリングにおける典型的なアプローチだ。シンプルかつ容易に組み上げられ、今後もコンポーネンツを共用するあらゆるモデルへ流用できるシステムなのである。
彼らが目指すのは、全モデルが新規プラットフォームへ移行するまでに、「すべての乗員と歩行者を保護する全方位の安全システム」によって「安全性全般でナンバーワンのブランドとなること」だ。
「際立とう2020」と銘打った中期経営ビジョンでは、2020年までに年産110万台突破を目指すという。顧客信頼度ナンバーワンと、業界最高レベルの利益率も目標だ。
しかしスバルには、今のような高い目標を掲げられるまでに、たいへんな苦労があった。