いかにしてスーパーカーは進化した? そもそもスーパーカーとは? 「代表作」を振り返る
公開 : 2017.06.24 11:55 更新 : 2017.06.24 17:22
ランボルギーニでもフェラーリでもない「あの」メーカー
そう、ポルシェである。959で、スーパーカーのルールを打ち壊したのだ。ベースはスーパーカー未満のクルマで、四輪駆動を備え、これまでのスーパーカーの基準からすると信じられないことだがリアシートさえそこにはあった。
そして、当時のライバルたちが超えることのできなかった約290km/hの壁を、450psの959はやすやすと越え、約317km/hに到達したのだ。
この技術競争にフェラーリは全く違うアプローチで挑んだ。その回答となるF40は、類を見ないほどシンプルで簡素なスーパーカーだが、実際に約322km/hに届く能力のある、初のロードカーとなった。
いまでも、F40こそが史上最も偉大なロードカーだというジャーナリストも多いが、ラ フェラーリが登場するまでは、わたしもそう信じてやまなかったことを告白しよう。
その後は混沌に満ちたスーパーカー第3期に入る。もはや、なんでもありといってもよかった。さまざまな方向から、これまでにないほどエキゾチックなクルマの計画が立ち上がったのである。
ジャガーは220mph(354km/h)を目指したモンスター、XJ220の市販化を発表。イタリア人のロマーノ・アルティオリは、ブガッティの商標権を手に入れ、自身が究極のロードカーだと信じる一台を造るべく新会社を興した。
その一方でマクラーレンのロン・デニスは、1988年のイタリアGPを終えてフライトを待つリナーテ空港の出発ロビーで、ゴードン・マーレーと語り合っていた。もちろん、歴史を変えることになるあのクルマのアイデアについてだ。
そのアイデアが具現化されたとき、世の中は必ずしもそれらを歓迎できる状況にはなかった。現在ほどガソリンを浪費するクルマを敵視する風潮はなかったが、世界経済は後退しているさなかで、株主や労働者たちはこれ見よがしな富の象徴を、賢明な商品だとは見なさなかったのである。
£403,000(5,697万円)のXJ220は商業的に失敗し、それは£285,500(4,036万円)のブガッティEB110GTにしても同じ。多くの同類が同じ道をたどったのである。
小さく、緻密で、実用に堪えうるマクラーレンF1は成功したのではないか、といわれるかもしれないが、基本的にはジャガーやブガッティと同じだ。
ロードカーの性能の水準をこれまでにないほど引き上げたとはいえ、彼らはこの過激で先進的なスーパーカーの販売に苦戦した。しかも£634,500(8,970万円)という桁外れの金額ながら、1台造るごとに赤字が累積したといわれ、公道仕様の生産は64台に留まったのである。
それ以降、スーパーカーの進化は鈍った。止まりはしなかったが、F50やエンツォ・フェラーリは著しく速さを増したわけではなく、市販車の性能はもはや頭打ちかと思われたほどだ。
しかし、それは間違いだった。次に状況を打破したのは、フォルクスワーゲン傘下で再生を果たしたブガッティである。