まるで天国 英国一の「セレブ専用」高級地下ガレージに潜入
公開 : 2017.06.24 19:30 更新 : 2021.01.30 21:59
運営者の生い立ちがきっかけ
運営者の名前はティム・アーンショー。マルボロ・ホスピタリティユニットを5年間率い、フェラーリF1チームと仕事をしていた人物である。
「あのころの経験で、本当に細部まで気配りするというのはどういうことなのか叩き込まれました」と彼は回想する。
それは確かだが、彼のビジネスが特別なものにまで高められているのは、顧客のクルマにとっての最善を求めることが何を意味するのか、彼が心の奥底で理解しているからだ。
そんな気質が培われたのは少年時代のようだ。
1994年、まだ13歳だった彼は、MGBベースでモーガン4/4のレプリカを造り始める。
両親は農場を所有しており、造りかけのクルマを置いていたのは、そこにある離れの一軒だった。やがて彼は大学に通うために住まいを移したが、週末ごとにその離れへ足を向け、4/4レプリカの製作に没頭したという。
「クルマが傷んでしまうかもしれない作業場に、そのまま置いておくのがイヤだったんですよ。だから、農場内のもっと広い場所に移しました。本当に広かったですよ。140坪くらいありましたね。それで思ったんです。『自分以外のクルマを置くにも十分なスペースがあるな』って。そこでホームページを立ち上げて、その場所を宣伝し始めました」
ほどなくして、そこには隣家のジャガーE-タイプとマーク2が収まり、またべつのオーナーの三菱ランサー・エボⅥが加わった。
その後、イベント会社のプロカーへ入社した彼は、大型免許を取得し、5シーズンにわたりマルボロF1モーターホームのキャラバンで世話役を務めた。
その一方で、自動車保管ビジネスは拡大を続け、勤務を終えると顧客の愛車を受け入れる準備のために家路を急ぐ毎日だったという。
やがて2009年、彼はプロカーの職を辞する決心をするが、そのときのガレージ業は、35台のクルマを預かるまでになっていた。彼は語る。
「そのままでもビジネスとしては順調に続けられるとも思いましたが、単なる自動車保管以上のことをしたかったんです。車庫内での車両チェック、出庫時の手順、いつでもどこへでも出向ける引き取りと搬送、などなど。モットーは『どんなときでも答えはイエス』です」
最近では、夜の8時に彼自身がクルマを引き取り、戻ってから洗車して、そのクルマを翌朝8時に再び顧客の下へ届けたこともあったという。
またべつのドライバーは、自身の所有するフェラーリ575Mが故障した直後でありながら、修理に充てるはずだった休日を返上して、フランス北部のランスまで、顧客の930ターボを届けに行ったこともあるという。
全ては、アーンショーが掲げるモットーに忠実であるためだ。
そうそう、これだけ豪華なクルマに混じって、大衆車のメトロがここに置かれているのも、顧客第一主義のなせる業だ。
「状態は完璧にしてあります。お客様にとっては、センチメンタルな理由で大事にしているクルマですから。なんでも、お母様の愛車だったそうです」
これこそ、クルマ愛だ。アーンショーが大切にしているのは、まさにそれなのである。