フェラーリ812スーパーファストに初試乗 F12 TdFの危うさ払拭 「最高のGT」と評価
公開 : 2017.06.27 19:50
812では絶対に失敗できない
まあ、F12 TdFは限定車だから、そうしたもろもろをわきまえた、数少ないオーナーの手に渡っている限り問題はないだろう。
しかし、812はレギュラーモデルだから、そういう割り切りはできない。金銭的な条件などを別にすれば、基本的に乗り手を選べないのである。
それでいて、TdFと同じサイズのタイヤを履き、同様に後輪ステアを備え、しかもパワーアップしている。大丈夫か? と問いたくなる。
ところが、デ・シモーネは、限界域でもF12よりドライブしやすいクルマだという。812はピレリPゼロを履き、後輪ステアは改良版となり、電子制御デフやスタビリティコントロール、ドリフトコントロールに加え、フェラーリ初の電動パワーステアリングが採用されている。
搭載されるV12エンジンは、2002年にエンツォでデビューした6.0ℓのブロックがベース。15年の間には、内部パーツや補器類の改良や変更を繰り返してきたが、ブロックそのものは同じものだ。
今回はストローク延長で排気量を6.5 ℓとしたが、これは拡大できる限界に近い。ということは、このブロックも退役間近なのかと思われるが、フェラーリではそんなことはないという。
燃料噴射システムは、従来の200barから350barへ噴射圧を高め、レッドラインは8900rpmまで上昇したが、もっと引き上げる余地があるのだとか。すでに超高効率の吸排気系を備える自然吸気ユニットだが、次期改良版はムービングパーツなどに新素材を導入することで、9000rpmは余裕を持って突破できる目途が立っているらしい。
小排気量の直4あたりならまだしも、それを6.5ℓV12でやってのけるというのだから、いやはや、ワンダフルな話ではないか。
もちろん、燃費やエミッションは改善する必要があるが、その一助となったのが新型のインジェクションシステムだ。8km/h以下まで減速するとエンジンを停止するアイドリングストップの貢献もあるが、そのフィーリングはどうにも奇妙なものだった。
最高出力は8500rpmで、最大トルクは7000rpmでそれぞれ発生すると聞けば、高回転型ユニットだと思われるだろう。しかし、トルクは3500rpmで最大値の80%を発生する。なにより、最高出力は800psだ。半分しか出ていなくても、不足などあろうものか。