ランボルギーニ・ミウラSVで「ミニミニ大作戦」の舞台めぐる
公開 : 2017.07.09 11:10 更新 : 2017.07.09 11:48
大ヒットした名映画「ミニミニ大作戦」に敬意を。ミック・ウォルシュがグラン・サン・ベルナール峠を眺望しつつ究極のスポーツカー、ランボルギーニ・ミウラSVで攻めます。
「ザ・イタリアンジョブ」さながらに
ランボルギーニ・ミウラSVで、あの有名な映画「ザ・イタリアンジョブ」(邦題:ミニミニ大作戦)の冒頭のシーンのロケ地を探す旅に出る、という企画ほど、面白いものはない。
多くの読者の方々にとっては、ジュリア・スーパーのパトカーと、ミニがカーチェイスを繰り広げる、この映画に魅了された経験を持つ人が多いと思う。
しかし、それよりももっと衝撃的だったのは、冒頭で、ランボルギーニ・ミウラがトラクターによって、崖から突き落とされるシーンだ。
そのシーンを撮影した場所に、40年ぶりに立ってみよう、というのが今回の旅の趣旨だった。
ピーター・コリンソン監督の古典的名作の40周年を記念して、フランス、イタリアを通り、帰りには映画の冒頭の場所、グラン・サン・ベルナール山岳路を経由して高速カーチェイスをする、という計画が実行に移されたのである。
1966年の3月に、ジュネーヴ・モーターショーでランボルギーニ・ミウラが登場し、自動車業界に一大センセーションを巻き起こした。
その時の会場からほぼ目と鼻の先にあるホテルの玄関ホールから外へと1歩踏み出すと、個性のない現代の車の間にあって、金色に輝くSVを直ちに発見した。
流麗で、セクシーで、曲線美あふれるそのスーパーモデルのような存在の前に、周囲のあらゆるものが色あせ、取るに足りない存在に見えてしまう。
762台生産された中の1台。今見ても、それが新車であった時と同様に魅了される。だが、究極のミウラとされ、148台しか生産されなかったSVは、その中でも、ひときわ魅力的だ。
このメタリック・ゴールドの傑作は、フランスの実業家ジャック・デンビエルモン氏が注文したものだ。氏は、SVを定期的に運転している。
イタリアで最近、全面的にリビルドされた車体番号4878は、ジュネーヴ−モン・ヴァントゥ往復による記念すべき慣らし運転から戻ってきたばかりだ。
オーナーが、クルマは走るためにあるという信念の持ち主であったため、勇敢にも、我々の巡礼の旅にSVを気前よく貸してくれた。
そのオーナーがキーを渡す時にこう警告してくれた。「市内を低速で走るとギクシャクします。サスペンションはハードです。後輪のタイヤは交換が必要です。でも、大いに楽しんで下さい」
フロントカウルの下にフルサイズのスペアタイヤを寝かせているため、ミウラは、現代の大半のスーパーカーよりもはるかに実用的であり、リヤの狭くて深いトランクにこれほど荷物が積めるのは驚きである。
SVの官能美を堪能しつつ、駐車場の狭い出口から抜け出す作業に神経をすり減らす。高めの位置にあり、かなり上を向いた3本スポークのハンドルを囲むように膝を曲げ、座面の低いシートから見回す。この1971年に製造された素晴らしいSVは、1775mmよりもはるかに車幅があるように感じる。
フランスからモンブラン・トンネルまで南に向かって爆走する。ハンドルとクラッチの位置が体から遠く、ハンドルの上部に手を届かせるため、また、クラッチを踏み込むため、腕と足をかなり伸ばさなければならない。
短めのバケットシートに少し身をかがめると、70年代風のおしゃれなブルーノ・レザーに張り替えたばかりのガラスのように光るコクピットは驚くほど広々としている。
目がくらむような真昼の日差しが反射し、計器が見えにくい。人間工学的には問題があるものの、まるで航空機のように頭上にスイッチが並ぶレイアウト、そして突き出たハンドルは、流麗な外見に見事にマッチしている。
快適とまでは言いがたいものの、背中の痛みと引き換えに、このエキサイティングな体験があるのなら本望だ。
フロントウィング越しに前方を眺めると、まるで“ラクエル・ウェルチェが寝起きに自分の豪華な足を眺めている”ような気分になる。
その曲線美、そして快楽中枢を直撃する魅惑に満ちた横置きのV12エンジン、さらにそれらを強調するトランスファーギヤの切り裂くような切ない音色が合わされば、ミウラの細かな欠点など一切気にならない。
途中で、ミウラ信者の教祖サイモン・キッドストンの粋なブラックのSVと合流する。