AUTOCAR英国編集部が選ぶ「いま買えるクルマ トップ50」 2017年版 トップ5

公開 : 2017.07.17 10:40

2位:マクラーレン570S

普段なら、こんな道でスーパーカーの走行シーンを撮影するような危険は冒さない。今回はレアケースだ。まっさらなマクラーレン570Sを走らせているのは、狭い上に、メンバーの誰も来たことがないコースである。

いつもなら、ウェールズの山あいを縫うワインディングに持っていくところだ。いや、実際にそこまで行ったのだ。その日は朝から雲が立ちこめ、やがて吹き付けてきた雨が地面で巻き上がり、谷を埋めるような状況となった。

これはスーパーカー向きの天候じゃないと判断したわれわれは、逃げ場を探して、エクスムーアに辿り着いたのである。

そこは狭いだけでなく、轍と穴がそこかしこにあり、部分的にはセンターラインもなく、所々が補修中だった。ウェールズの天候と同じくらい、この道路はモダンなミッドシップのマクラーレンを楽しむのに向いていないと思われた。

しかし、そうではなかった。

570Sは、そんな道にも十分に順応できることを示したのである。ノーマルモードでも、サスペンションは道路の不整をみごとに吸収した。

信じがたいほど精密で、重さも完璧であり、一定のペースと素晴らしいインフォメーションを備えたステアリングは、タイトで滑りやすい山間路でみごとなハンドリングを見せる。

グリップとボディコントロールは、期待されるレベルを文句なく満たしている。ピレリPゼロ・コルサが濡れた路面に叩きつけるパワーは570psにものぼるというのに、過敏さや神経質さは微塵もないのだから驚きだ。

しかも、前日には同じクルマでタイムアタックを行い、倍の価格を求められるようなクルマに遜色ない性能を、われわれは見せつけられている。

同程度の価格で、カーボンシャシーを持つミッドシップスーパーカーがあったなら、それはきわめて特殊なスポーツカーだろう。

これほど幅広い状況に対応し、自信を持って走らせられるのは570Sだけだろう。

マクラーレンではかつてP1にも乗ったし、570GT720Sにも試乗した。それでも、やはり570Sはたぶんそれらにも増してクルマ好きに訴えかけるものがあると思える。

マクラーレンのクルマ造りにおける美点のすべてが、ここには詰まっているように感じられるのだ。

無駄なものを削ぎ落とし、エッセンスを集めたようなそれは、最もシンプルで、比較的安価で、しかも魅力的なマクラーレンである。

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