回顧録(4) BMW 8シリーズ(E31) 新型の吉凶も占う

公開 : 2017.08.13 16:10

あらたな試みが生んだ複雑性

GTカーとして仕立てたかっただけに留まらず、このクルマは同社のテクノロジーのショーケースでもあった。メルセデスができること以上を、BMWはできると、このクルマで世界に誇示したかったのである。

このことは、厄介な複雑性を呼び込み、BMWが考える究極のラグジュアリーを実現するためには、大幅な重量増加を余儀なくされた。

850iの重量は、635CSiに比べて300kgも重い、1800kgに達した。この重量増加がハンドリングに及ぼした影響は計り知れず、悪い予感は的中することになる。

6シリーズの軽快さや、現代版にアップデートされたM1スーパーカーを期待したひとびとは、雑な電子スロットルの躾けや役目を十分に果たしているとは言いがたいソフトなサスペンションに失望することになる。

追い討ちをかけるように、8シリーズが発表された1989年という年は、世界がリセッション入りし、5ℓの重量級のGTカーを訴求するには、よいタイミングとはいえなかった。

セールスは不調であり、BMW自身も過ちを犯したことを認めざるを得なかった。

幸いにも、BMWの動きは早かった。

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