「生ける伝説」 BMW 3.0CSL vs M3 CSL 当時の時代背景を学ぶ(前編)
公開 : 2017.08.16 18:40
BMW 3.0CSLとM3 CSL。2台に共通する「CSL」の価値を、改めて探ります。いま乗ると、どんな気分なのでしょう。想像するだけでもどきどきしますね。
■もくじ
前編
ーライトウエイトファンタジー
ーBMW、過去の過ち ライバルとの戦い
ーいよいよエンジンを始動してみよう
ー乗り心地 運転のしやすさは?
ー気づけば鳥肌が立っている
後編
ーM3 CSL 乗りこんでみると……(8月17日公開予定)
ーM3 CSL 気になるところだらけ(8月17日公開予定)
ー強化は、なんのためなのか?(8月17日公開予定)
ーシャシーのカリスマ的魅力(8月17日公開予定)
ー3.0CSLとM3 CSL どっち?(8月17日公開予定)
ライトウエイトファンタジー
時の経過とともにこの道は田舎道となり、クルマがめっきり減った。待避所にクルマを止め、フロントガラス越しに漫然と道を眺めたが、木漏れ日を浴びるターマック以外何も見るものがなかった。
73年型「バットモービル」のキャビンで聞こえるのは、刻々と時を告げる時計の音だけだった。
遠くから低いエグゾーストノートが聞こえてきたかと思うと、あっという間に音が大きくなってきた。反対車線からM3 CSLが姿を現し、減速しながら近づいてきた。
ステアリングホイールを握っているのは、本誌のグレッグ・マックリーマンのようだ。連続したギアチェンジによってキビキビと区切られた6気筒エンジンの旋律に耳を傾けていると、日の光をガラス面にきらめかせながらシルバーグレーの個体が素早く目の前を通り過ぎ、旋回して止まった。ライトウエイトスポーツクーペが2台揃った瞬間だった。
E46のBMWが好みだと公言していたマックリーマンは、どうだと言わんばかりににやりと微笑む。2003年に製造され、英国市場に出荷された422台のM3 CSLの中の1台、限定番号161のBMWに私も以前に乗ったことがあるのを奴も知っているのだから得意げに微笑むのは無理もない。
しかし思い出に浸っている時間はない。M3の後継モデルはどうあるべきかが、今回のテーマだ。
優れた製造品質も重要だが、それよりも先祖にあたるモデルからどれほど良くなっているかが重要なのだ。他のモデルが不評だったがために、優秀に見えるのではだめ。1台のクルマが自立できるだけの実力を持ち合わせているかどうかが重要なのだ。
ホモロゲーションのためのスペシャルモデルである初代M3は、このクルマの熱烈な信奉者にとって触れてはならない神聖な存在であったし、いまでもそうだ。
しかし、すべての自動車メーカーと同じように、BMWも、性能を明確に改善しながら、利益拡大のためにM3の魅力を増幅しようとした。