「生ける伝説」 BMW 3.0CSL vs M3 CSL 当時の時代背景を学ぶ(前編)
公開 : 2017.08.16 18:40
BMW、過去の過ち ライバルとの戦い
実はそんなクルマが誕生しそうな兆しはそれ以前からあった。コンバーチブルのE30 M3が代表的な例だ。美しいシャシーがソフトトップという虚栄のために台無しになった代表といえるだろうが、売れ行きは良かった。また325i Sportの滑らかさを好む顧客もいた。
1992年型のE36 M3は気筒を2つ増やし、より洗練されたクルマになった。オリジナルよりパワフルだが運転のしやすいクルマでもあった。
だが、ボディがより大きく重いため、焦点がぼけ、路面との繋がりが希薄などこか妥協したクルマになってしまった。またパワーステアリングの採用によって官能的なマニュアルステアリングの良さも失われた。
BMWブランドオーナーの人口統計データや市場浸透度、カスタマークリニックのデータに基づいて開発されたため、E30のレースに勝利するという意気込みも失ってしまったのだった。
E36は、旧モデルの理想を裏切ったモデルという不評をぬぐい去ることは絶対にできないだろう。
1995年に加速性能強化のための軽量化や、クルマとドライバーの繋がりを強めるための大幅モデルチェンジが施されたが、オリジナルの、ひとを魅了する魂とフィーリングは欠けたままだった。
1994年にアウディがターボ装備のパワフルな320psのエンジンを搭載したRS2を発表し、またメルセデス・ベンツも加速に優れた190シリーズの後継モデルとして280psのC36 AMGを投入。
ドイツで高性能4シーターのせめぎ合いが起ころうとしていた時期だけに、BMWのこの有様は強く懸念された。また、WRCホモロゲーションのためのターボ搭載4輪駆動車を登場させることによって、極東からの圧力も強まりつつあった。