「生ける伝説」 BMW 3.0CSL vs M3 CSL 当時の時代背景を学ぶ(後編)

公開 : 2017.08.17 17:10

強化は、なんのためなのか?

改善や強化の理由はサーキットを走れば一目瞭然だ。

前にこのクルマを楽しんだのは数年前なのに、このクルマは元気が湧いてくるような鮮やかなスリルを与えてくれる。今でもその時の経験が目に見えるように蘇る。

ヘッドに手を加えたことにより1ℓ当り113psもの馬力を発生するエンジンは、レーシングライセンス保有者にはリミッターを解除することができる素晴らしいものだ。リミッターなしだと最高速は306km/hにも達する。

回転数の限界に向かって回転が高まっていくときのこのエンジンほど、素晴らしいサウンドを轟かす6気筒エンジンはほかにない。

M30のミドルレンジの唸りや洗練されたサウンドには欠けるが、高めの4900rpmで37.7kg-mのピークトルクを発生するS54 B32HPは、怒気に満ちた金属的で強烈なサウンドで空気を揺さぶる。

レヴカウンターが光る。7500rpmを超えレッドゾーンに入ると、オレンジ色のライトが点灯するのだ。8250rpm時の出力は365psにも達する。

S54は輝かしいまでにリニアであり、狂おしいまでに強烈だ。パドルを軽く操作するか(パドルはステアリングホイールと一緒に回転する)、ギアレバーを引けば、即座にギアがシフトされ、不明瞭さは微塵もない。

窓を開けた状態でアクセルを踏み続けると、VANOSバリアブルバルブのひどく攻撃的なサウンドが耳を楽しませてくれる。天国にいるようだ。

大口径エグゾーストパイプとラム効果を発揮する軽量エアボックスとが、豪快なサウンドで大声合戦を繰り広げ、もっと楽しみたいという気持ちになるが、3桁マイルの速度で競い合うレースは始まったかと思うとあっという間に終わってしまう。

ブレーキの利きはどうだろうか。

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