「生ける伝説」 BMW 3.0CSL vs M3 CSL 当時の時代背景を学ぶ(後編)
公開 : 2017.08.17 17:10
シャシーのカリスマ的魅力
ほとんどピッチすることはないが、荷重が移動する間、265/30ZR19のリアタイヤがやや落ち着かない様子を示しながら振動する。
ギアをダウンシフトし、スロットルをわずかに踏み込むと、エグゾーストが急に変化し、高らかに吠えてみせる。
CSL仕様、特に機敏なステアリングホイールのラックと重量比の51:49への変更が(M3は52:48)、ドライバーを良い気持ちにさせてくれる。
ドライバーズシート中心にクルマがまるでピボットするように感じられるほど、CSLはバランスの取れた抜群の俊敏性を示す。
ステアリングのギアもぴったりで、やや無感覚なところがあるが、フロントエンドはシャープで、草で覆われたエイペックスをかすめるのに完ぺきだ。
カリスマ的魅力を持つシャシーは率直そのもので、グリップレベルやヨー角度を含め、最新の情報が如実に伝わってくる。コーナーやS字型で急転換を試みたときにもロールは滅多に感じられない。
ミシュランのタイヤは、寒冷時やウェット状態、あるいは落葉で路面が覆われているときに面白いものを見せてくれる。
このタイヤは、トレッドがゴムに刻み込まれているのでなく、タトゥーで溝が記されているように見える。CSLは、まるでスパイクヒールを履いた陸上短距離選手ウサイン・ボルトのように、コーナー、ときには直進路でもがき、くねり、苦闘した。もうテクノロジーに妥協して、トラクションコントロールを再びオンにした方が良さそうだ。