回顧録(5) ポルシェ911ターボ(930) 当時の評価、いまの感触は?
公開 : 2017.08.18 16:40
サウンドやシフトフィールは?
ただ、911ターボの扱いやすい車幅(公表値は1775mmである。911ターボが、現在のフォルクスワーゲン・ゴルフよりも24mm小さいというのは、にわかには信じがたいのだが)のおかげで、細い道でもヒヤリとすることはほとんどない。
2速、3速、4速は思ったよりもゲートの奥の方まで入る。アクセルを踏み増すと、バイブレーションの効いた重低音から、水平対向ならではの音を伴った、ソウルフルな叫びへとエスカレートしていく。
全てが溶け合って官能的で勇壮な雄叫びに変わるのだ。この音色には、ある種の依存性さえある。
世間とそれにおもねる連中が、ターナー賞受賞作品を無条件に絶賛するのと同じように911に熱狂する中、筆者はかつて、水平対向6気筒エンジンのポルシェ911に根強い不信感を持ち、醒めた目で見る非主流派に属していた時期もあった。
しかしながら、素晴らしい911ターボとの再会が、911に対する筆者のそうした偏見を動揺させ、ひびを入れ、そしてついには木端微塵に打ち砕いてしまったのだった。