ロールス・ロイス・レイス「ブラック・バッジ」 ルーマニアの旅(前編)
公開 : 2017.08.19 19:40 更新 : 2017.08.19 19:40
不思議なほどにピッチングを抑える
近年ヨーロッパ諸国が、非情にも130km/hの速度制限を設けるようになった中で、部分的とはいえ、ドイツの速度無制限区間で咎められることなくスピードを出すことがどんな感じなのかを探ることに興味があった。
少しの間、160km/hは道徳に反すると感じた。しかし、われわれは、誘われるままに184km/hに達していた。
不思議なほど洗練されたこのロングホイールベースは、完全にピッチングを抑え、素晴らしいスタビリティを確保している。
1時間ほど192km/hで巡航し、工事区間で80km/hへ減速を余儀なくされた時は、止まっているかの錯覚を覚えた。
オーストリアの国境では、8日間の入国に€8(1100円)を支払う必要がある。路肩のブースに並んで許可証を買うようは前時代的であるが、フランスの高速道路の、度重なる、時間と気力を奪うそれに比べればまだまともな方である。
オーストリアは絶景で有名である。リンツを過ぎたあたりから、その美しい情景が始まり、そして、突然ビエナ郊外にたどり着いた。
スケジュールは押していた、が、近道はあった。しかし、この壮大な街中を観て回らないわけにはいかない。われわれの良心を慰めるために、ビエナの感銘を与えるバロック建築に囲まれた場所でロールスの撮影を行った。そして、先を急いだ。
巨大なドナウタワーを左手に、ハンガリーの国境を越え、ブダペスト郊外へ入る頃には日はすっかり落ちていた。ましな部屋を用意できるホテルをネットで探した。
688kmを7時間ちょっとで走破した。わたしの概算が正しければ、平均燃費はリッター6.3kmというところだろう。この数字をどう思うかは、あなたの立ち位置による。
(後編につづく)