ロールス・ロイス・レイス「ブラック・バッジ」 ルーマニアの旅(後編)
公開 : 2017.08.20 19:10
「立入禁止」区間に入ることにした
時おり、ちらりと山頂がみえることがあった。まだ雪が積もっていた。何百メートルも上方である。そう多くはない直線では距離を稼いだ。
標高1524mでは、木々は細く、まばらである。それらが絶えると、今度は巨大な岩の壁が迫り来る。しかし、われわれは容赦なく鞭を打った。
ロールスはとてもよくやってくれた。路面をグリップする絶大な能力を幾度となく証明してくれた。コーナーリングを綺麗にまとめ、ロールは最小限で、狙ったラインから猛然と立ち上がる。
そしてわれわれは、コンクリートで補強されたトンネルの前にたどり着く。その壁のいくつかは、落石を防ぐものである。警告標識は、進入禁止と読める。
それをみて、少しの間、ここでこのツアーが終わってしまったことに肩を落としたが、見回したところ警察の姿はみえない。
だからわれわれは、バリアを越えて先に進むことに決めたのである。