1987年式BMW M5(E28)に試乗 元祖「羊の皮をかぶった狼」
公開 : 2017.09.03 11:10
M5 甘美さで唯一無二の存在
エンジンに火を入れると聞こえてくるのは高貴なピュア・サウンド。
ギアはスローだが精密で、ギア比の選択も美しいと思う。エンジンの限られたトルクを最大限に生かそうとし、5速の終わりまで絶え間なく加速する。
じつに30年前、このクルマはかんたんに、かつ速くドライブすることを可能にさせた。パッと見ただけでは高級な4ドアサルーンだが、実は今のフォルクスワーゲン・ゴルフRよりも軽い。
それに、4200rpmから7000rpmまでの間でよく吹けるエンジンは、現代のスポーツカーを追いかけまわすことだって可能だ。
ハンドリングはあなたが想像しているよりもずっといい。E28の5シリーズは、特にウエット時、リアがスライドしやすい特性なのだが、シャシーがふいに破綻することはない。
また、サスペンションのモディファイはLSDの標準装備化も伴っていて、乗った感じは現代のクルマにだって負けていないという感覚になる。
ステアリングからは、感じたことのないような正確さを味わうことができ、速く走らせようとすると自然でマイルドなアンダーステアが伝わってくる。
すべてのクルマがM5のように地味であるべきではない。ただし、その地味さは「羊の皮をかぶった狼」を愛してやまない理由であるのは紛れもない事実。
そして好きな「羊の皮〜」はいくつもあるが、M5のようなクオリティのクルマは唯一無二なのかもしれない。