ロードテスト(6) レンジローバー・ヴェラール ★★★★★★★☆☆☆

公開 : 2017.09.09 12:20  更新 : 2021.04.13 18:04

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★☆☆☆☆☆

£64,000(911万円)の値札を掲げるレンジローバー・ブランドのモデルに、4気筒ディーゼルは居場所を見出せるのか。それを探ることは、上位モデルより安価で経済的なレンジローバーに、注目を集めるなりの価値があるのかという、冒頭の問いへの答えを求めることでもある。

ランドローバーの名誉のために言えば、この類のエンジンを積みながら価格が£50,000(712万円)を超える高級SUVは、ヴェラールが最初ではない。

そして将来的には、高級車における搭載比率が上がっていくことが予想される。しかし現時点で、このエンジンが、ヴェラールを差別化するうえで真に貢献できているのだろうか。

その答えを口にするのは気が重い。インジニウム・ディーゼルの高出力版は、どうにか及第点を与えられるのだが、そうでない仕様はまったくもって力不足なのだ。

240ps版のキャビンは、F-PACEのそれより静かで、振動も少ない。むろん、これは4気筒ディーゼルで、本質的にはスムースさも静粛性も6気筒ディーゼルに敵わない。

しかし、概ね洗練性は高く、冷間時や高回転時にはやや音が大きいが、乗員の会話を妨げるほどではない。

残念なのは、パフォーマンスの絶対的なレベル。同価格帯のライバル車と比べれば、明らかにプアなのだ。

様々な走行モードやトランスミッションのセッティングを試したが、0-97km/hはいつもの往復平均値で9.3秒がいいところ。これは、ランドローバーの公称値に対して2.5秒ものビハインドである。

さらに、2年前に計測したアウディQ7の3.0 TDIにも大きな差をつけられている。今どきの新型車で、重要な性能の数値がここまで公式データに届かないのは、かなりのレアケースだ。

高級SUVの購買層が、このヴェラールにずば抜けた速さを求めてはいないであろうことは当然ながら予測できるが、エンジンとトランスミッションがやや活発さに欠け、レスポンスが遅いことに、たとえドライビングに集中していなくても気づかされるのは、果たして許容できるだろうか。

キックダウンするようなときもパワートレインはスムースだが、予期した以上に動き出しまでのタイムラグがあるのだ。また、4気筒ディーゼルにしては回るエンジンだが、追い越しや牽引、ライトなオフロード走行などで期待される、力強くたたきつけるようなトルク感とは無縁だ。

燃費については、このヴェラールD240の大きな強みだ。実走での計測では17.1km/ℓをマークしたが、2トンもあるSUVとしては馬鹿にできない数字といえる。

ただし、これにはそれなりに落ち着いた走りをすることが必要だ。もっとも、ヴェラールのエンジンとギアボックスは、元気よく走るよりおとなしく運転した時の方がいい感触を得られる。

テストコース

比較的不活発な方向転換のレスポンスと大きめのロールは、何十年にもわたるレンジローバーの走りの典型的な特徴だが、それはヴェラールでも、ハードに走ると現れる。

ゲイドンはそれなしにクルマを作ることもできただろうが、それではおそらくレンジローバーらしくないものになっただろう。

それでもヴェラールは、ボディの動きをより大型のモデルより抑えており、素晴らしくバランスの取れたシャシーは、コーナーでずっと頼れるものとなっている。

それにより、ドライバーズカーらしさは増し、実際より車高は低く、車重は軽く、レンジ・スポーツより自由度の高いSUVに感じられる。

ダイナミックモードでは、さらに正確さや安定性が高まり、高速走行でも十分以上なレベルとなる。

グリップ限界に差し掛かると、勢いよくコーナーに入ってもトルク・ベクタリング・システムがラインをしっかりキープし、マッド&スノー仕様のタイヤでもドライ路面を驚くほど捉えてくれる。

エンジンはT6へ駆け上がるのに苦戦し、思ったより低いギアへ落とす必要がある。

ヴェラールの旋回性はよく、T2へのターンインも決めやすいが、コーナー中盤では優れたバランスを見せる。

エアサスペンションはT1でのトランスミッションの振動をうまく吸収し、グリップとスタビリティを維持する。

発進加速


テストトラック条件:多湿路面/気温19℃
0-402m発進加速:17.1秒(到達速度:134.1km/h)
0-1000m発進加速:31.2秒(到達速度:171.4km/h)


ボルボXC90 D5(2015)
テストトラック条件:ウエット路面/気温13℃
0-402m発進加速:16.3秒(到達速度:137.4km/h)
0-1000m発進加速:30.0秒(到達速度:174.6km/h)

制動距離


テスト条件:多湿路面/気温19℃
97-0km/h制動時間:3.82秒


ボルボXC90 D5(2015)
テスト条件:ウエット路面/気温13℃

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

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