現役引退間近 技術よりも「情」なパフォーマンスモデル一気乗り(前編)
公開 : 2017.09.09 20:10
すべてが「笑い」 技術を凌駕
GTS-Rの英国での価格は£74,500(1060万円)で、わずか15台が販売された。6200ccのV型8気筒に吸気周りの変更とソフトウエアのアップグレードをくわえ、姿勢安定制御装置も付いてくるが、GTSと比較して11ps向上している。
586psと75.0kg-mのパワーが有れば、不平を言うひとはいないだろう。GTS-Rは劇的に速い。強烈な8つのシリンダーは、メイ首相率いる勢いのない政治とは裏腹に、1880kgのボディを一気に加速させる。
アクセルに軽く触れるだけで分厚いトルクが湧き、ロングギア比の設定もあって3000rpm以上エンジンを回さずとも交通をリードすることが可能だ。もちろん燃費は酷い。
アクセルを踏み込めば、エグゾーストパイプのバルブ開放とともに笑いが溢れるようなサウンドが響き、6000rpmに向けて加速度が徐々に増していく感覚が得られる。
ただしGTS-Rで本当に注目すべき点は直線での爆発的な加速だけでなく、ワインディングでのドライビングフィールにある。
大柄なボディはコーナー毎にロール/ピッチが大きいものの、その動きはしっかりコントロールされている。コーナーでのロールは重いなりに遠心力で沈むが、減衰力も適切でスプリングで跳ね返すような挙動はない。
とりわけ洗練されている印象はないが、GTS-Rの存在感は揺るぎなかった。
現代の最新技術、ダウンサイジングターボエンジンやデュアルクラッチギアボックス、アクティブエアロなどの装置が備わらないからと言って、アストン マーティン・ヴァンテージもそうであるように、クルマの美点が失われるとは限らないのだ。