特別試乗 アバルト124ラリー 公道走れぬ2265万円、高い? 安い?
公開 : 2017.09.18 15:40
いざ、走らせてみると…
特徴のない数多くの180度ヘアピンに幾つかの短い直線、ジャンプポイント、助手席側のタイヤが浮き上がる箇所。
コンサルヴォはステアリングのふたつのダイアルの効果をデモしながら、ハンドブレーキを効かせ、コーナーでクルマを横に向けながら下草に乗り上げ、深い溝を越え、尊敬できるほど巧みに操る。
恐怖にしびれるだけで、ほとんど何も感じられなかった。自分の心拍数も、ザベルト製の深いバケットシートで身体が固定されており、測ることができない。
一番マイルドなスロットルマッピングに設定しても、エンジンは頼もしいサウンドを発し、あっという間にリミッターに当たりLEDのシフトインジケーターが点灯する。不慣れなスタートに失敗して再始動したときも同様だ。むせび泣く排気音とロードノイズ、興奮が集中力を削ぎ、方向感覚を掴みにくいスペシャルステージは混沌とする。
しかし小ぶりなボディサイズと、近年のクルマの割には立ち上がった視界の良いウインドスクリーンと、懐の深い挙動のおかげで、クルマとコースに次第に慣れてくる。比較的低い着座位置が優れた重心位置を作るとともに、荒れた路面をアクセル全開で駆け抜ける時など、自分の真下で何が起きているのかが非常につかみやすいのだ。
アバルトの軽量、素直で許容範囲の広いシャシーセッティングにより、思ったより簡単にペースを上げていける。フィオリオがクルマを浮かせていた、きついコーナーを攻める。理想的な体重配分によって「アンダーステアを排除できる」というフィオリオの主張の通り、危険そうな急コーナーでも自然に、直ちに方向を変えていくことが可能だ。
乗り心地も素晴らしく、大きな起伏もショックアブソーバーがいなし、不安定さはない。プログレッシブで剛性感のあるブレーキに大きなパドル、パワートレインの味付け、アバルトの荒々しい性格が、最高のエンターテイメントを生みだしている。この124ラリーは多くのラリーカーより運転は簡単なことは間違いないが、意のままに操るには十分な練習が不可欠だ。