お手頃ドライバーズカー選手権(5) 決勝戦

公開 : 2017.09.18 17:40

ホットハッチが忘れていた「一体感」

カービングナイフのようにクールな金属製のシフトレバーを押し込むと、それは実に心地いタッチを返してくる。ストロークは短く、ガッチリとして、完璧な重さで、積極的にシフトチェンジできる。このクオリティに比べると、単体で乗った時には不満を感じなかった308GTiのそれが、ダルく、ユルく、魅力に欠けるものに思えてくる。最新モデルの水準に照らしても、これは上々の部類だ。


これほど素晴らしいMTだけでも、このカテゴリーに何が足りなかったを知ることができる。このドライバーがコントロールする領域の広さや、メカとの一体感は、パドルシフトのホットハッチでは決して味わえないものだ。

そうしてローギアに入れ、前方が開けたところで、スロットルペダルを床まで踏み込んでみる。このホンダの4気筒、今回の4台の中でパワーは上から2番目で、トップのメルセデス-AMGとの差はこのクラスとしては小さくなく、また3番目のフォルクスワーゲンには肉薄されている。

ところが、走り出した途端にふたつの事実に驚かされる。まず、スペック表の数値から想像するよりはるかに速く感じられること。つぎに、その速度域が公道で日ごろ使うのに、もしくは公道上で長く楽しむのに必要なレベルを超えていることだ。


もっとも、メルセデス-AMGはこれよりさらに上で、同じことをすればスリルを通り越して心配を覚える羽目になる。対して、プジョーでは全然物足りない。ホットハッチのパフォーマンスという観点では、ゴルフRとシビックRがドンピシャど真ん中といった具合になる。どちらも扱いやすく速いクルマで、ただしエンジンにより純粋なカリスマ性が感じられるのはシビックの方だ。

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