往年の名車 vs 現代の量販車(3) BMW M3(E30) vs 320d(F30)

公開 : 2017.09.24 10:40

最高の道具と、最高のオモチャにして武器

高速コースを320dで走れば、およそ想定外の環境でもいかに速く、安心感があり、高い能力を発揮するか強い感銘を受けるだろう。しかし、M3で同じことをすれば、まったく違う体験となる。どちらが速いかなど、どうでもいい気にさせられるのだ。

たとえるなら、30年前に引っ越した若き日の親友が、偶然再会したその足で酒場に向かい話してみたら、昔と変わらず同じものを注文し、同じジョークに笑い転げ、ちょっとばかり悪い遊びでもしたくなってうずうずするところまでそのままだったようなものだといえる。

1速の位置をわざわざ確かめることはしなくても、手が勝手にシフトレバーを手前に引く。そうして走り出してみれば、重さもギア比も完璧なステアリングホイールが手の内で穏やかに回り、このM3が、いつの時代にもパフォーマンスカーの象徴であり続けた理由をまさしく思い出すことになる。対して320dは、退屈な仕事を効率的かつ効果的に行うための道具という印象だ。

なにも320dが悪いと言っているわけではない。これは、この手のクルマの中でもとりわけ素晴らしいが、やはりツールでしかないのだ。だがM3は最高のオモチャであり、望めば最高の武器にもなる。

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