往年の名車 vs 現代の量販車(4) CLK63ブラックシリーズ vs C63 Sクーペ
公開 : 2017.09.24 12:10
ブラックシリーズはAMG版GT3
エンジン出力が通常のCLK63より29psアップして514psになったことなどは、大した問題ではない。このクルマは、その大パワーを持て余してはいない。もっとも目に付くのは、フロントが75mm、リアが66mm拡大されたトレッドと、それを収めるためのオーバーフェンダーを与えられたボディの方だ。その下にあるサスペンションは専用設計で、アジャスト機構をフルに盛り込まれており、このクルマがサーキット志向であることを強く示している。
さらに、超軽量の鍛造ホイールやリフトを打ち消すカーボンリアウイングなどのエアロパーツ、プログラムを変更したギアボックスを備え、リアシートは取り払われている。これはポルシェ911GT3にインスパイアされたクルマだということは、AMGが認めるところ。たしかにこれは、その手のマシンである。
今になってドライブしてみても、がっかりするところはまったくない。その速さは途轍もないなどという言葉さえ甘いものに感じられ、6.2ℓV8自然吸気のパワーフィールはレースカーを思わせる。その排気量にもかかわらず、本領を発揮させるには回転を上げる必要があり、しかし、いったん回してしまえば、ほかのいかなるメルセデスでも味わえない極上のサウンドに包まれる。
それにも増して、シャシーがまた秀逸。リアにはブラックシリーズ用のオイルクーラー付きLSDが備わるが、それがいかにハードな利きを見せても驚きはしない。後輪にちょっとばかり多くのパワーを送り込めば、スロットルペダルの踏み込み量に比例したテールスライドを生み出せる。10年経ってなおここまでものすごく、まったく失望を覚えないクルマというのはそうあるものではない。