お金をかけないリッチライフ(3) BMW 850CSi 試乗記
公開 : 2017.10.01 10:10
パワーにまかせてリアを流す
このクルマはテクノ満載と言えるほど、本当に至る所にスイッチがあるのだ。全てのスイッチに精通するのに、正直なところ2日間もマニュアルに取り組まなければならなかった。
がっしりしたシフトレバーを1速に入れ、スロットルを踏み込むと、V12エンジンのトルクは爆発的に解放される。1975kgと重いため、今回の4台の中で0-96km/h加速は最も遅いが、その差はわずか0.1秒だ。
スポーツモードに切り替え、スロットルのセッティングをアグレッシブにしても、ベルベットのように滑らかに走ってゆく。優れた加速性能とキャビンの中の静謐さは驚くほど対照的だ。
ステアリングギアレシオが高いため、低速時にも意外なほど操舵性に優れている。コーナリングでは、4輪操舵とASC+T(オートマティックスタビリティコントロール+トラクション)のお陰で、予想を遙かに超えたハンドリングを示す。
フロントが重いためにフェラーリのような本質的なバランスの良さはないが、心ゆくまで楽しめるクルマだ。フロントが突然グリップを失うことはないから、パワーにまかせてリアを流してコーナーを抜けられる。
550psのエンジンを搭載したM8プロトタイプを生産化しなかったのはまことに残念だが、当時の厳しい市況を考えればやむを得ない。
一方で850CSiは、Mの文字を与えられていないが、事実上のMカーだと言うひともいる。このBMWは、今でもヨーロッパ大陸を制覇できるだけのポテンシャルを持つが、コンディションの良い中古車を見つけるのはなかなか難しい。