お金をかけないリッチライフ(最終回) フェラーリ456 GTA 試乗記
公開 : 2017.10.01 12:10
分別のあるフェラーリが欲しいなら
バリアブルアシスト方式のステアリングは軽く、オートマティックギアボックスも滑らかにシフトする。サスペンションは沈着冷静に如何なる路面の凹凸も吸収してゆく。
しかし、がら空きの道路でスロットルペダルをいっぱいに踏み込むと、巨大な獣が姿を現す。442psのパワーと56.1kg-mのトルクを発生するエンジンが、まるでボディの重さがなくなったかのように、急激な勢いでクルマを押し出すのだ。
跳ね馬のことは忘れてしまおう。このクルマは、サラブレットのようなパワーを誇る巨大な馬車馬と言えるのではないか。つまりフェラーリ456は、性能面ではほかの3台を圧倒しているのだ。
あまりに完璧な走りをするため、最初のコーナーにとんでもない速度で突っ込みそうになった。急ブレーキを踏み、「今後要注意」とメモを取りたくなる。こうして制限速度内に車速を落とすと、今度は456GTの強大なグリップが際立ってくる。
われわれのテストコースでは128km/hの回転数は2500rpm止まりで、本格的なテストができない。アクセルを軽く踏み込むと回転は5500rpmまで跳ね上がり、ぐんぐん前に進んでしまう。
低速走行ではあまりひとを虜にするような走りをしないが、シフトレバーをDから3速または2速に変えると、加速性能が急変し、レスポンスがシャープになる。
制限速度が十分に速いストレートを見つけたら、このクルマの凄まじい性能を堪能できるだろうに。確かにかなり高価な買い物だが、それだけの資金をつぎ込む価値がある。
分別のあるフェラーリが欲しいなら、それに一番近いのはこのクルマなのだ。